1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03833008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中野 明彦 東京大学, 理学部, 助教授 (90142140)
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Keywords | タンパク質の分泌 / 小胞輸送 / 無細胞輸送系 / 小胞体 / ゴルジ体 / GTP結合タンパク質 / SAR1 / 酵母(S.cerevisiae) |
Research Abstract |
酵母の小胞体からゴルジ体への小胞輸送には,Sar1pという低分子量GTP結合タクパク質が必須である。このSar1pの機能を詳細に解析するために,無細胞輸送系の開発と変異株の作成を行った。 まず,無細胞輸送反応については,小胞体からゴルジ体への輸送全体を測定に加えて,小胞体からの輸送小胞の形成反応を定量することを試みた。セミインタクト細胞にATPとサイトゾルの存在下で基質の[ ^<35>S]プレプロα因子を加えると,まず小胞体の膜透過が起こって小胞体型の分子種が形成される。次に小胞体型の分子種は,輸送小胞に詰めこまれて一旦細胞質中に放出される。この段階で中速の遠心を行うと,小胞体とゴルジ体を含むセミインタクト細胞と,輸送小胞が分離できることがわかった。この輸送小胞をふたたびセミインタクト細胞に戻して,ゴルジ体との融合が起こるかどうか現在検討中である。少なくとも,小胞体ーゴルジ体間輸送の初期過程である輸送小胞の形成を,一つの素反応として定量する方法が開発できたと考えている。また,Sar1pを大腸菌発現系を用いて精製し,この無細胞系でアッセイすることができるようになった。興味深いことに,Sar1p・GTPγSは,輸送小胞の形成反応には正常であるが,ゴルジ体への移行の活性は全く示さず,Sar1pによるGTPの加水分解が,輸送小胞形成以降の何らかのステップに必要とされることが明らかになった。 また,in vitro mutagenesisの方法によって,SAR1の温度感受性変異株を2株分離することができた。現在その変異の性質を,in vivo,in vitroで解析中である。これらの変異株は,無細胞輸送系などを用いた生化学的解析に有効であるばかりでなく,サプレッサ-遺伝子の分離・同定という,強力な酵母分子遺伝学を推し進めていくにあたって,きわめて重要な武器となるものである。
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[Publications] S.Nishikawa and A.Nakano: "The GTPーbinding Sar1 protein is localized to the early compartment of the yeast secretory pathway" Biochim. Biophys Acta. 1093. 135-143 (1991)
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[Publications] T.Oka,S.Nishikawa and A.Nakano: "Reconstitution of GTPーbinding Sar1 protein function in ER to Golg:transport" J. Cell Biol.114. 671-679 (1991)