1991 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞膜上での血液凝固調節因子トロンボモジュリンの機能と発現調節機構の解析
Project/Area Number |
03833027
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
石井 秀美 帝京大学, 薬学部, 助教授 (50102710)
|
Keywords | 血管内皮細胞 / 血液凝固調節 / トロンボモジュリン / プロテインC / 発現調節 / レチノイン酸 |
Research Abstract |
トロンボモジュリンは血管内皮細胞の膜上に局在し血液凝固反応を制御する糖タンパク質である。組織から分離・精製されたトロンボモジュリンには、1)トロンビンによるプロテインC活性化能を促進する補酵素作用、2)トロンビンのフィブリン産生能を阻害する作用、3)アンチトロンビンーIII活性を促進する作用のあることが知られている。本研究によって血管内皮細胞膜上でも1)の作用を示すことが確かめられ、生理的にも機能していることが明かになった。しかし、2)および3)の作用に関しては内皮細胞膜上で検出することはできなかった。さらに検討を加えたい。 一方、第2の研究課題であるトロンボモジュリンの発現調節においては大きな研究成果を得た。すなわち、血栓を発症しやすい炎症時やガン発症時に血液中で増加するサイトカイン(インタ-ロイキンー1や腫瘍壊死因子)によって、内皮細胞でのトロンボモジュリンの発現は遺伝子転写レベルでの抑制を通してその生合成が阻害せれていることを明かにし、炎症時やガン発症時において血栓が発症しやすい原因の一端を指摘することができた。 さらに加うるに、ビタミンAの代謝物であるレチノイン酸がトロンボモジュリンの発現を増加させることを発見した。その機構はトロンボモジュリン遺伝子の転写レベルを上昇させることによりトロンボモジュリン生合成を増加するためであることを明かにした。しかも、レチノイン酸によるトロンボモジュリン遺伝子の転写レベル上昇はCycl icAMPによる転写レベルの上昇とその機構を異にしていることも明かにし、本タンパク質の発現調節の解明に大きく貢献することができた。今後はレチノイン酸によるトロンボモジュリン発現増加の作用機構を5'ー非翻訳領域遺伝子の解析からさらに詳細に検討したい。
|
-
[Publications] 石井 秀美: "血管内皮細胞が産生する血栓調節因子のサイトカインによる発現異常とそれへの対応" 日本網内系学会誌. 31. 45-53 (1991)
-
[Publications] Shuichi Horie: "Retinoic acid stimulates expression of thrombomodulin,a cell surface antiーcoagulant glycoprotein,on human endothelial cells." Biochemical Journal. 281. 149-154 (1992)