2004 Fiscal Year Annual Research Report
反芻動物の生殖機能調節中枢機序における酢酸およびグルコースの役割の解明
Project/Area Number |
03J00809
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松山 秀一 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | GnRHパルスジェネレーター / 多ニューロン発火活動 / 絶食 / ケトン体 / シバヤギ / 側脳室内投与 / 静脈内投与 |
Research Abstract |
生殖機能の栄養状態による制御に代謝基質や代謝関連ホルモンが関与すると考えられている。揮発性脂肪酸を主要なエネルギー源とする反芻動物は単胃動物と異なる神経内分泌機構により生殖機能が制御されている可能性が考えられるが、そのメカニズムは明らかでない。これまでに、シバヤギにおいて絶食により性腺刺激ホルモン放出ホルモンパルス状分泌調節機構(GnRHパルスジェネレーター)の活動が抑制されること、また、その時に血中ケトン体濃度が上昇することを明らかにしている。本研究では低栄養時に増加するケトン体が栄養状態を伝えるシグナル物質として作用し、GnRHパルスジェネレーター活動の制御に関与する可能性について検討した。 卵巣除去後エストラジオールを代償投与したシバヤギを用い、末梢におけるケトン体の作用を検討するため、頸静脈に留置したカニューレを通じケトン体を22.9-31.2mmol/hの速度で24時間投与した。一方、中枢におけるケトン体の作用を検討するため、側脳室に留置したカニューレを通じて、ケトン体を0.08mmol/hの速度で5時間投与した。GnRHパルスジェネレーターの活動を多ニューロン発火活動記録法により記録するとともに、経時的に採血を行い、血中ケトン体濃度を測定した。 ケトン体の静脈内投与は血中ケトン体濃度を上昇させ、絶食時に見られる濃度より高い値で維持したが、GnRHパルスジェネレーター活動に影響をおよぼさなかった。一方、側脳室へのケトン体投与はGnRHパルスジェネレーター活動を抑制した。このとき血中ケトン体濃度は変化しなかった。以上の結果から、ケトン体は中枢性にGnRHパルスジェネレーター活動の抑制を引き起こすことが明らかとなった。低栄養時にはケトン体の脳内への取り込みが選択的に増加し、生殖機能の抑制を引き起こすと考えられるが、その詳細なメカニズムは今後の検討課題である。
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