2003 Fiscal Year Annual Research Report
ツォンカパの空思想における基礎理論とその思想史的展開
Project/Area Number |
03J01433
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
野村 正次郎 大谷大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ツォンカパ / チベット仏教 / 空思想 / 否定対象の確認 / 否定対象の分岐点 / 否定対象の境界線 / 中観思想 / 空性理解 |
Research Abstract |
本年度は、当初計画していた、(1)ツォンカパの推理論の解明・(2)空思想の修行的側面・(3)ツォンカパの思想のなかで唯識派から中観派に連続する部分の抽出という三つの研究課題があったが、(1)および(2)に関する調査の成果の一部を早稲田大学東洋哲学会において発表した。また(1)(3)をよりグローバルな視点にて再検討し、その成果を日本印度学仏教学会で発表した。 (1)に関する調査としては、特に正理知の機能とその概念体系を整理し、インド出張時にデプン・ゴマン僧院のチベット仏教研究者たちと議論をすることができた。その結果、「当事者意識の問題」ということについて、文献にもとづいて、ある程度の概念体系の整理をすることができた。それらの作業から付随的に解明できた事項については、早稲田大学東洋哲学会においても発表したが、平成16年度にはその成果を改めて公開したいと考えている。 また(2)(3)の問題について、デプン・ゴマン学堂前管長、ケンスル・テンパ・ゲルツェン師と共同でツォンカパの代表作のひとつである『菩提道次第大論』『菩提道次第小論』の文献調査・概念の整理を行い、特に彼の直弟子であるバソ・チューゲンの割注などを参照して、その概念整理のための準備作業を完了することができた。 さらに、当初本年度の計画には含まれてない平成16年度の課題としていた、顕教と密教における空性理解の比較考察の問題についても、インド出張時に怖畏金剛の二次第についての教授を受けそれを契機に、その後現在にいたるまでゴマン僧院在籍の研究者と共同でケードゥプジェ著『タントラ部総論』の解読作業をすすめている。これらの詳しい理論についての内容整理と考察は、平成16年度に行なう予定にしている『真言道次第論』との比較作業により、更にすすめたいと考えている。
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