2004 Fiscal Year Annual Research Report
極渦境界領域の小規模波動擾乱の力学と物質輸送混合過程への影響
Project/Area Number |
03J01491
|
Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
冨川 喜弘 国立極地研究所, 研究教育系, 特別研究員(PD) (20435499)
|
Keywords | 極渦 / 短周期擾乱 / 中間規模波動 / 対流圏界面 / 粒跡線解析 / 順圧不安定 |
Research Abstract |
今年度は、主に以下の三つの課題について研究を行った。 中緯度対流圏界面近傍に局在する水平波長2000km程度の小規模擾乱は、総観規模低気圧発達の前駆体、および強い風雪を伴うジェット気流上の風速極大(ジェットストリーク)の生成源として注目されている。これまでは上記小規模擾乱の水平構造のみが注目されてきたが、本研究ではその鉛直構造を運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの比という観点から調べた。その結果、この擾乱は大きな渦位勾配を持つ対流圏界面に捕捉された波動が、対流圏界面が有限な幅を持つ効果と非地衡風成分の影響によって変形を受けたものとして解釈できることがわかった。以上の成果はアメリカ気象学会誌(Journal of the Atmospheric Sciences)に投稿準備中である。 第43次南極観測越冬隊が南極昭和基地で行ったラジオゾンデ集中観測のデータを解析したところ、冬季成層圏極渦内に周期12時間程度の短周期擾乱が検出された。欧州中長期予報センターの客観解析データを用いた解析の結果、この短周期擾乱は2000km程度の水平波長を持ち、渦位勾配の逆転する順圧的に不安定な領域を背景風速と等しい速度で伝播する中立波的な性質を持つことがわかった。現在、そのような不安定領域で中立波が卓越した原因を調べる解析を行っている。 大気中の物質輸送について調べるため、粒跡線解析モデルの開発・改良を行った。粒跡線解析とは、大気中に仮想的に置かれた粒子をその場所の3次元(または2次元)風速を用いて時間と共に移流させ、その粒子の起源、および行く末を調べる手法である。現在、上記流跡線解析モデルの概要と性能を記した論文を極域気象・雪氷学術誌(Polar Meteorology and Glaciology)に投稿中である。
|