2003 Fiscal Year Annual Research Report
アブラナ科植物の自家不和合性における自他識別機構の解明
Project/Area Number |
03J01689
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
下里 裕子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アブラナ科植物 / 自家不和合性 / 受容体型キナーゼ |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに、アブラナ科植物の自家不和合性反応が、花粉表層に存在するSP11(塩基性低分子量蛋白質)と柱頭細胞膜上に存在する自己のSRK(受容体型キナーゼ)との結合、それに伴うキナーゼの活性化によって引き起こされていることを明らかにしてきた。更に柱頭細胞膜上では、約60kDaのSLG様蛋白質がSP11と結合しており、SRKと共に受容体複合体を形成していることが示唆された。しかし、酵母や動物の培養細胞系において、SRKとSLGを発現させただけでは活性型受容体の再構成には至っていない。そこで、今年度は柱頭細胞膜上の受容体複合体の構造を明らかにし、活性型受容体の再構築を目指した。 1.受容体複合体の解析 申請者はBiotin化SP11を用いることで、柱頭抽出物からSRKと60kDa蛋白質からなる受容体複合体を回収することに成功している。 そこでSLGに対するペプチド抗体を数種類作成し、ウエスタンブロティングにより解析を行った。その結果、60kDa蛋白質はSLG分子とは異なる構造を有していることが判明した。現在、質量分析装置(LC-MS/MS)を用いた蛋白質同定やSLGと高い相同性を有するSRKのレセプタードメインに対するペプチド抗体を作成、解析を行っている。更に、Biotin-SP11によってSRKと共に回収されてくる蛋白質の解析を進めており、この解析によってSRKと受容体複合体を構成する蛋白質が同定できるものと考えている。 2.植物培養細胞での活性型受容体の再構築 これまでのところ、植物細胞以外ではSRK及びSLGを発現させてもSP11結合能を有した受容体は得られていない。そこでシロイヌナズナ培養細胞(T87)やタバコ培養細胞BY-2にSRK/SLGを発現させる系の構築を進めている。現在、両培養細胞系においてSRKの発現に成功しており、今後SP11との相互作用を解析していく予定である。
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