2004 Fiscal Year Annual Research Report
前震のマルチフラクタル特性を用いた地震予知への基礎研究
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03J01831
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
楠城 一嘉 統計数理研究所, 調査実験解析研究系, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 前震 / 余震 / 地震 / マルチフラクタル / フラクタル / 地震予知 / 活断層 / シンメトロピー |
Research Abstract |
本年度、1.フラクタル幾何学を用いて地震群の空間分布の自己相似性を定量化できるという結果を得た。また、2.地震群の空間分布の異方性を"シンメトロピー"という新たに導入した尺度を用いて定量的に測定できるという結果を得た。これらの研究を発展させ、来年度は、フラクタル次元及びシンメトロピーを用いて、地震群の一つである前震群の空時間変化を調べる。そして、それらが地震予知に有効であるかどうか明らかにしていきたい。 具体的な内容は以下のようにまとめられる。 1.典型的な地震群の一つとみなされる余震群の空間分布についてフラクタル解析を行った。日本で起きた14個の内陸地震に伴って発生した余震の震央分布はフラクタル特性を示すことが確認され、それらのフラクタル次元(D_2)が見積もられた。このことから、前震群のような地震群の空間分布の定量化にも、フラクタル幾何学は有効であることが示唆される。 さらにこれを発展させるために、余震が群をなして発生した領域(余震域)にある既存の活断層系についてフラクタル次元(D_0)を見積もった。そして、フラクタル次元D_2とD_0の関係を調べ、正の相関があることを発見した。この相関関係より、余震の空間分布のフラクタル性は、活断層系のフラクタル性と関係しているという新知見を得た(Nanjo and Nagahama,2004,2005 in press)。 2.岩石破壊実験等から、前震の空間分布が異方性を示し、その異方性の時間変化が定性的に指摘されている。そこで、パターンの異方性を定量化できる尺度"シンメトロピー"の開発・改良を行った。また、前震のモデルと考えられる、岩石破壊実験中に発生した微小破壊の空間分布にシンメトロピーを適用し、そのシンメトロピーの時間変化を調べた。その結果、シンメトロピーの時間変化は微小破壊の時間変化をモニターできることが分かった。(Nanjo et al.,2004,2005,2005)。このことから、前震の空間分布の異方性を定量化するのにシンメトロピーは有効であることが示唆される。
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