2003 Fiscal Year Annual Research Report
X線および中性子回折測定を用いた有機結晶中における水素移動反応の機構の解明
Project/Area Number |
03J03581
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
細谷 孝明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中性子回折 / 固相反応 / 絶対不斉合成 / 結晶相反応 / 水素移動 |
Research Abstract |
N,N-dibenzyl-1-cyclohexenecarbothioamide 1aは固相中で光照射することで非常に高いエナンチオ選択性(〜97%ee)で光学活性なβチオラクタム2aを生成する。我々はこの反応に伴う水素移動の過程を明らかにするため、移動するベンジル基α位水素を重水素に置換した結晶1bを作成した。この光反応の生成物2bに生じる-C^*HD^不斉炭素(キラルメチレン)は分子内で重水素が移動してきた場合と分子間の場合で異なる絶対配置を持つことが1bの結晶構造から予想される。本研究ではこの絶対配置を単結晶中性子回折法で決定し、重水素移動のメカニズムを明らかにした。2bの結晶自体の絶対構造および炭素骨格をX線構造解析で、水素・重水素原子の位置決定を単結晶中性子構造解析で行った。二ヶ月間光照射した1bの重水素置換結晶を日本原子力研究所の研究炉JRR-3Mで測定し、構造解析をおこなった。その結果、光反応は結晶全体で20%程度進行しており、さらに-C^*HD-平面の核密度分布図には水素と重水素を示すピークがはっきりと確認され,この不斉炭素の絶対配置がRであることがわかった。そして、重水素がベンジル基α位炭素から同一分子内で移動したことを明らかにした。この成果によって、純粋な有機分子結晶でも、(1)中性子回折に使える大きな結晶(1mm^3以上)が準備できる、(2)結晶が壊れずに20%程度まで反応が進行する、という条件さえ整えば、十分に反応後の分子の、水素を含めた精確な構造を得ることができることわかった。そして、水素移動が重要なポイントになることが多い一般的な有機反応への応用の可能性を示した。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Takaaki Hosoya, Hidehiro Uekusa, Yuji Ohashi, Takashi Ohhara, Hiroyuki Kimura, Yukie Noda: "Deuterium Migration Mechanism in Chiral Thiolactam Formation by Neutron Diffraction Analysis"Chemistry Letters. 8. 742-743 (2003)