2004 Fiscal Year Annual Research Report
「満洲経験」の歴史社会学-中国東北地区における被植民者の記憶の政治学
Project/Area Number |
03J04522
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂部 晶子 京都大学, 大学院・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 満洲 / 植民地 / 記憶 / コメモレイション / 中国東北 |
Research Abstract |
「満洲国」期における被植民者の生活世界の解明という本研究での目的にむけて、今年度の研究計画にあるように、主として中国東北社会において「満洲経験」がどのように提示されているのかについて実証的な調査、資料収集をすすめた。 まず中国残留日本人(いわゆる「残留孤児」「残留婦人」)を多く出した地域である、黒龍江省方正県においてフィールドワークをおこなった。とくに、当地域からすでに日本へ帰国した残留日本人およびその家族の方々が、方正県にある「日本人公墓」に墓参りをする団体ツアーの企画、実行の過程を参与観察し、記念碑設立のプロセス等にかんする聞きとり調査をおこなった。方正県政府によって建立された墓は、中国東北地区で唯一の日本人開拓団犠牲者のための記念施設である。当地域にかんする文献や記録のなかでは、東北地区での「帝国主義的支配と抵抗」といった「満洲国」にかんするティピカルなロジックとはべつに、「中国人民の寛容さ」という語りが主旋律となっている。当地域での日本人公墓建設の経緯やその建設の当事者である残留者の方々への聞きとりを整理すると、これらの語りが、解放後ことに80年代以降の日本人関係者、観光客の増加とともに日本と方正県とのかかわりのなかで形成されてきたものであるということが明らかとなった。 同時に、「満洲国」の直接的な体験者の方々から、ライフヒストリーを聞きとり記録する調査も、東北各地と日本国内においてすすめられた。これらの成果の一部は、次頁の既発表論考および中華人民共和国の内蒙古自治区フフホトにある内蒙古大学で開催された「中国近現代史研究国際学術交流」(2004年8月)での報告(坂部晶子「難於講述的殖民地経歴-対一位当過"慰安婦"人的採訪(植民地経験の語りがたさ-黒龍江省東寧県における「慰安婦」経験者の聞きとりから)」等のなかで発表されている。
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