2004 Fiscal Year Annual Research Report
ローマ共和政政治のダイナミズムに関する多元的解析の試み
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03J05434
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 崇 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1) (50708683)
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Keywords | ローマ / 共和政 / トポグラフィー / フォルム・ロマヌム / 民主政 / 記憶の場 / ポリュビオス / 地中海 |
Research Abstract |
本年度の研究業績としては、主として、前2世紀ローマ市のトポグラフィー的研究とポリュビオス『歴史』序文訳註があげられる。 前者は、前2世紀のローマ市、とりわけその政治的中心地であったフォルム・ロマヌムを取り上げ、フォルム・ロマヌムの物理的構成の変化とローマ政治の変質を関連づけて理解しようとする研究である。議論の焦点は、前2世紀半ばにおけるトリブス民会議場の、コミティウムから、より広いフォルム中央への移動である。この移動の意味を考察するにあたって重要なのは、コミティウムを囲んでいた上層市民の業績を称揚するモニュメントである。すなわち、民会議場がコミティウムからフォルム中央に移動することによって、コミティウムのモニュメント群が醸成していた議場を取り巻く政治的社会的雰囲気がよりゆるやかになり、その結果、前1世紀における活発な民会活動の前提が形成されたと考えられるのである。市民の投票行動に影響を与えていた政治的社会的枠組みが弛緩する一方で、上層市民はより具体的、効果的に自己をアピールし、選挙、立法、裁判を有利に進める必要性にせまられた。前2世紀後半のフォルム・ロマヌムのモニュメントやフォルム近くに建設された上層市民の邸宅などは、以上のローマ政治変質の文脈で理解されるべきものである。本研究の遂行にあたっては、考古学資料の活用が不可欠であったが、研究指導の委託により、本年度後半は英国ケンブリッジ大学古典学部の豊富な資料をもとに研究を進めることができた。なお、受入研究者の指導のもと、本研究を約10000ワードの英語論文として形にすることができたが、来年度中にこの論文の英文学会誌投稿を実現したい。 ポリュビオス『歴史』序文訳註は、古代史研究会ホームページ上にて進行中の研究である。本史料のローマ共和政理解における重要性は、ここに繰り返すまでもないが、『歴史』序文訳註は、ポリュビオスとローマ共和政の関係を把握するにあたって、重要な意義をもつと考えられる。
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