2003 Fiscal Year Annual Research Report
都市空間の変容と場所イメージの歴史的形成に関する実証的研究-杜の都・仙台を事例に
Project/Area Number |
03J06997
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
武田 篤志 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 仙台 / 杜の都 / 森の都 / 場所イメージ / 都市空間 / 観光のまなざし / 社会学 / 地域研究 |
Research Abstract |
本年度は主に戦前期に重点を置き、仙台が近代日本の国土形成過程と交差する局面に留意しつつ、「杜の都」の場所イメージを支えていた社会的構成要素を明らかにした。 1.「杜の都」の呼称が発生した明治末・大正から昭和戦前期にかけての観光案内書や紀行文、またそれらと隣接していた郷土史家の言説などを中心に資料収集を行い、仙台が「杜の都」としてどのように表象されていたのかについて検証した。これと平行して、同じ「森の都」の別称をもつ熊本市、金沢市についても戦前期の資料の閲覧・収集を行い、これら三都市の比較から、鉄道旅行の発達に伴い浮上した、近代日本の一形象としての地方都市像を明らかにした(『東北文化研究室紀要』第45号に論文発表)。 2.観光書や郷土書で流通していた「杜の都」の呼称が、昭和に入ると流行歌に用いられ、歌声の経験として場所の記憶となる局面に注目し、戦前に人気を博したレコード曲「ミス仙台」と戦後の仙台を表象する「青葉城恋唄」を取り上げ、二つの歌詞に描かれた仙台像の比較分析から仙台の場所イメージの変容を明らかにした(この成果は平成15年度東北社会学会で発表)。 3.戦後から今日に至る「杜の都・仙台」のシンボルを担ってきた青葉通りのケヤキ並木に注目し、都市空間の樹木をめぐるイメージの諸相について検証した。特に平成元年、地下駐輪場建設に伴う同ケヤキの一部撤去、および今後予定される地下鉄東西線建設に伴う大規模なケヤキ撤去をめぐって噴出した、市民の反対運動を分析し、この問題の底流に、明治以降都市計画思想としてわが国に輸入され、仙台では戦災復興事業による街路樹整備を契機に「杜の都」の志向的価値となった、街路樹・緑地に伴う「緑」のイメージが影響している点について明らかにした(『日本都市学会年報』第36巻に論文発表)。 4.理論的考察として、アンリ・ルフェーヴルの都市論に関する論考を発表(『社会学研究』第47号)。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 武田 篤志: "「杜の都・仙台」の場所イメージと<都市樹>のトポロジー --都市の現在を考える一つの試み"日本都市学会年報. 36巻. 81-88 (2003)
-
[Publications] 武田 篤志: "アンリ・ルフェーヴルの都市論・社会空間論 --都市・空間プラチックの問題構制について"社会学研究. 47号. 131-151 (2003)
-
[Publications] 武田 篤志: "三つの「森の都」と観光のまなざし--仙台・金沢・熊本"東北文化研究室紀要. 45号. 1-13 (2004)