Research Abstract |
現在,軌道上で運用されている国際宇宙ステーション(ISS)には,SSRMSと呼ばれるマニピュレータシステムが搭載され,ISSの組立作業の支援を行っている.一方,2010年に打ち上げ予定の日本実験モジュール(JEM:Japanese Experimental Module)には,親子型のマニピュレータシステムJEMRMSが搭載される.これらのマニピュレータシステムは,ISSの組立,保全作業や各種実験の支援を行い,クルーの船外作業の負担軽減に役立つと期待されている.しかし,JEMRMSのような大型の宇宙用マニピュレータシステムでは,マニピュレータ自身が振動してしまい,それによって,作業効率が低下してしまうことが懸念される. JEMRMSは全長約10m,6自由度の親アームと約2m,6自由度の子アームの大小2つのロボットアームが直列に連結されたマニピュレータシステムである.現在,計画されているJEMRMSの制御方式は,大別すると,親アームによる粗位置決め制御,子アームによる精位置決め制御の2つのモードから構成される.各々のモードにおいては,一方のロボットアームのみが制御され,他方はサーボロックされている.特に,子アームのみによる精位置決め制御では,根元部の親アームは柔軟ベースとして作用する. そこで,本研究では,マニピュレータの振動が生じない無反動制御や振動を抑制する制御を適用し,作業効率の向上を目指してきた.それらの成果は国際学会において成果発表を行っている(研究発表の項参照).また,一方,これらの制御法が,精度良く実施されるためには,システム全体の正確な動的パラメータを予め取得している必要がある.しかし,対象物を把持する作業ではモデル化誤差の影響が大きく現れ,これらの制御精度の低下を招く恐れがある.特に,子アームのみによる精位置決め制御時に,システムがモデル化誤差を含む場合,その影響により,子アームが目標軌道を逸脱してしまう可能性がある.また,ベース部にもより大きな振動が励起されてしまう.そこで,本研究では,発想を転換し,ベース部の振動や子アームの目標軌道誤差に注目し,これらの情報から,把持対象物の質量等の動的パラメータを推定する手法を提案した.
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