2004 Fiscal Year Annual Research Report
長周期表面波散乱現象の解明と不均質構造における波形エンベロープ形成モデルの構築
Project/Area Number |
03J07346
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前田 拓人 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地球内部構造 / 地震波 / 散乱 / エンベロープ / Born近似 |
Research Abstract |
弾性波伝播媒体としての固体地球の構造の解明は,地震学的にも,また地球の発展史を考える上でも重要な研究課題である.特に広帯域地震波形の解析からは,地殻から上部マントルに渡る広い範囲の地震波速度不均質構造を検出できると期待されている.しかし,数秒から数Hzの地震波には,水平に伝わる表面波と地球内部を三次元的に伝わる実体波とが混在し,不均質構造に伴う互いの変換散乱の寄与が無視できない可能性がある.そこで,平成16年度は,長周期からやや短周期の不均質に伴う地震波の擾乱の全容解明を目指し,以下の研究を行った. 1.地球を周回する長周期レイリー波のアレイ解析に基づく長波長の散乱特性の推定: IRISならびにF-netによって記録された大地震の地震波形記録にF-K解析を適用し,エンベロープを構成する波群の構成要素を明らかにすることに成功した.該当する観測波形に余震群あるいは他の地震の影響が混在していないことを定量的に示し,レイリー波散乱波と,高次モード波群がエンベロープ形状に寄与していることをはじめて明らかにした.本成果は現在Geophysical Journal International誌に投稿中である. 2.実体波-レイリー波変換散乱モデルの構築 半無限媒質中における実体波と表面波との変換散乱をBorn近似基づいて理論的にモデル化した.この研究により,実体波と表面波の変換散乱の寄与を初めて定量化し,地震波速度不均質の統計的特徴と地震波エンベロープとを結びつけることができた.このことにより,実体波から表面波まで含めた地震波形エンベロープの解析から,微細不均質構造の特徴を抽出することが可能になった.本成果は,日本地震学会2004年秋季大会および東京大学地震研究所特定共同研究B「リソスフェアの短波長不均質構造の物理的解釈」研究成果発表会で発表した.
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