2004 Fiscal Year Annual Research Report
非線形応答を利用した化学情報変換システムの構築と超分子集合体への展開
Project/Area Number |
03J07963
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保 羊平 九州大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超分子化学 / 分子認識 / 非線形応答 |
Research Abstract |
非線形応答は、タンパク質が正確に情報伝達・変換を行う上で必要不可欠な機能である。人工系でも非線形応答を示す分子の開発が行われてきたが、「分子を認識した」という初期段階で止まっており、新たな機能の発現までには至っていない。そのような背景のもと本研究では、非線形応答を利用し、化学情報を多様な超分子集合体の発現へと変換する分子素子の開発を目指し、それによって、一次元および二次元に広がる超分子集合体の選択的構築・制御を自的としている。 これまでに上に示した目的を結実させるために設計した環状化合物の合成を行い、4量体、5量体、6量体、7量体の環状化合物をそれぞれ単離することに成功した。 実際に非線形応答を示すかどうか、それぞれの環状化合物とフッ化物イオンとの錯化挙動の検討を吸収スペクトルを用いて行ったところ、どの化合物においても3種類の等吸収点が観察された。その変化を詳しく解析すると、4量体では1個、1個、2個、5量体では2個、1個、2個、6量体では2個、1個、3個の順にフッ化物イオンが錯化していることが明らかとなった。さらに、それぞれの化合物において一定の結合パターンでフッ化物イオンが錯化していることも明らかとなった。また、一般に認識部位であるホウ素を複数個有するホスト分子は、フッ化物イオンが錯化するにつれ会合定数が大きく減少するということが報告されている。しかしながら、我々の設計した環状化合物についてはそのような挙動は観測されなかった。このことから期待したような構造の伝搬が誘起されて、非線形応答を示しているものと考えられる。本系のように非線形応答であるにもかかわらず、一定の結合パターンを有してゲスト分子が結合する系というのは、これまでに報告例は皆無であり、非常に興味深い結果である。
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