2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヘーゲル論理学における「本質論」の生成と弁証法的形而上学批判についての研究
Project/Area Number |
03J08477
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大河内 泰樹 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヘーゲル / ドイツ概念論 / 弁証法 / 論理学 / カント / 存在論 |
Research Abstract |
本研究は、ヘーゲル論理学、「本質論」の研究を通じて、弁証法の現代的意義を明らかとするものであり、その方法論は、発展史的アプローチと哲学史的アプローチの二つからなる。今年度、発展史的アプローチに関しては、ヘーゲル初期、特にニュルンベルク期の論理学体系構成の変遷に注目し、その結果「本質論」の構成が、いわゆる体系期のそれよりも、カントの『純粋理性批判』「反省概念の二義性」章の影響を如実に表しており、そこで扱われている伝統的存在論の諸原則より直接に取組んでいることが明かとなった。こうした研究を遂行するため、5月から7月、および10月から2月の間、ドイツ・ヘーゲル研究所に滞在した。また哲学史的アプローチの準備としてライプニッツ後期の形而上学の研究を行った。 論文「魂(Seele)から精神(Geist)へ-ヘーゲル論理学における形而上学的心理学批判-」、およびDie Logik der Identitat und der Verschiedenheit in Hegels Wissenschaft der Logikはこうした今年度の研究成果の一部を公にしたものである。特に後者では、ヘーゲル『大論理学』本質論第一編第二章「本質性および反省規定」の前半部「同一性」と「差異性」の解釈を通じて、ライプニッツの存在論的原則の一つであり、またカントが「二義性章」で批判した「不可識別者同一の原理」に対して、ヘーゲルの「差異性」が感性的直感形式としての空間を前提しないことによった後者と異なりながら、差異性が最終的には矛盾において解消されることを示すことによって前者とも異なること。また両者に見られる比較としての「外的反省」がこの論理課程を通じて、内的反省に包摂されることによって批判されていることを明らかにした。今後、「本質論」の他のカテゴリーについても順次同様の研究成果を発表していく予定である。
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[Publications] OKOCHI, Taiju: "Logik der Identitat und der Verschiedenheit in Hegels Wissenschaft der Logik"ヘーゲル論理学研究. 9. 25-56 (2003)
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[Publications] 大河内 泰樹: "魂(Seele)から精神(Geist)へ-ヘーゲル論理学における形而上学的心理学批判-"精神の哲学者ヘーゲル(岩佐茂・嶋崎隆編著)(創風社). 122-144 (2003)