2004 Fiscal Year Annual Research Report
海洋草食性ほ乳類ジュゴンの栄養生態と下部消化管機能に関する研究
Project/Area Number |
03J08732
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
高橋 徹 三重大学, 生物資源学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 消化管 / 管腔内 / 撹拌 / 細菌 |
Research Abstract |
ジュゴンは草食性で、盲腸内で繊維を消化する後腸発酵動物である。そのため、ほ乳動物の盲腸内の環境を明らかにすることはジュゴンの繊維に関しての消化戦略を明らかにする上で重要である。ジュゴンの発酵様式をマナティーとウマとバッチ培養を用いて比較したところ、動物種の間に大きな違いが認められなかった。そこで、盲腸が発達しているモデル動物としてモルモットやラットを用いて、盲腸内の細菌叢の分布や撹拌について実験を行った。モルモット盲腸内容物を液体窒素で凍結後に部位ごとに採取し、DNAを抽出して、16SリボソームRNA遺伝子の一部をGC357fと517rを使いPCRで増殖してDGGE (Denaturing gradient gel electrophoresis)で細菌群の分布の解析を行った。その結果、盲腸の直径方向上での細菌種に違いが認められた。塩基配列決定を行うと、盲腸内で部位差が見られる細菌種はRuminococcus albusやTreponema sp.である可能性が高いことが明らかになった。Ruminococcus albusは繊維消化能力が高いことが明らかであるが、繊維消化は盲腸内の特定の部位で活発である可能性が示唆された。また、この様な細菌種が盲腸内で撹拌されないかどうかをCTスキャンを用いた実験で検討した。すなわち、硫酸バリウム溶液をラット小腸遠位末端に麻酔下あるいは意識下で1mlを一回注入して36時間連続観察下で糞を順番に採取し、その糞をCTスキャンで観察した。その結果、バリウムの希釈や撹拌は良好ではないことが明らかになり、盲腸内での撹拌が乏しく、細菌種が完全に混ざらないことが推察された。このことから、盲腸は部位ごとに細菌種が異なり、繊維の消化能力は部位によって異なり、それらの細菌種はそれぞれが撹拌されづらい可能性が示唆された。このような盲腸内環境はジュゴンにおいても見られる可能性がある。
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