Research Abstract |
平成17年度は,ケイ素(Si)やゲルマニウム(Ge)といった半導体元素だけでなく,アルミニウム(Al)にその他の元素を組み合わせることによって生成させた複合クラスターも研究対象とし,クラスターの価電子数を制御することで電子的に安定なクラスターを生成させ,その電子状態の検討を通じて,複合クラスターの安定性に対する知見を得た。 SiおよびGeクラスターにおいては,種々の遷移金属や希土類金属(M)との組み合わせから,電子的に安定なサイズであるSi_<16>M,およびGe_<16>Mそれぞれにおいて内包可能な金属の半径の範囲について検討し,Ge_<16>はSi_<16>に比べて,より原子半径が大きい金属まで内包可能であることを見出した。 また,昨年度に設計・製作を行って利用可能にした,加熱型バルブを用いる改良型生成源により,電子不足系に対して1電子を供与することで閉殻電子配置を達成し,電子的に安定な中性複合クラスターを生成させることに成功した。さらに,中性で閉殻電子構造となり電子的に安定であることを,負イオン光電子スペクトルから実証した。アルカリ金属であるセシウム(Cs)は低沸点元素であるため,200℃程度に加熱することで,生成した複合クラスターとの反応に十分な量の蒸気を発生させることが可能となる。これにより,SiやAlの複合クラスターの中でも特に負イオン状態で安定なSi_<10>Sc(スカンジウム),Al_<13>,およびAl_<12>B(ホウ素)にCsをドープすることで価電子数を制御し,安定な三成分クラスターを生成させることにも成功した。そして,負イオン光電子スペクトルでは,Cs付加前と比較して高エネルギー領域のピーク形状が類似し,さらに低エネルギー領域にピークが出現した。すなわち,Csからクラスターへの効果的な電子移動が起こり,クラスター塩とも呼べるような安定な複合クラスターが生成することを示した。
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