2003 Fiscal Year Annual Research Report
凝縮転移下におけるDNA二重らせん鎖の力学的応答に関する理論的研究
Project/Area Number |
03J11025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和田 浩史 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 一分子計測 / DNA / 分子内相分離 / 電解質高分子 / 強結合 / 対イオン凝縮 / 分子動力学法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、溶液中の一分子DNA鎖が多価の対イオンによって凝縮相へ転移する際に示す力学応答を理論的に解明することである。本年度は相転移の理論と高分子の弾性が動的に結合したモデルを提案し、これを解析的・数値的に調べた。その結果、実際の実験と比較しうるパラメータ領域において、実験結果をほぼ定量的に再現する計算結果を得た。さらに、モデルから一分子の内部構造の変化を理論的に特徴付けたが、これらは現在まで実験的には観測されていない重要な知見である。主要な結果はすでに論文として出版された。 電解質高分子であるDNA鎖の凝縮転移は本来、電荷の関与する相転移であり、上記のモデルによる記述に終始しない、複雑かつ新奇なメカニズムを持つと期待される。これらの大部分は理論的に未解明であり、よりミクロからのアプローチが不可欠である。そのため、本年度はさらに対イオンの自由度を取り入れた高分子のばねビーズモデルに基づく確率的分子動力学シミュレーションを行った。その結果、電解質高分子の自己凝縮、および実験的に観測されている特徴的な力学応答を再現することが可能となった。また張力下における凝縮対イオンの空間分布が大変興味深い構造を形成している可能性を示唆する計算結果も得られており、これらの点についてさらに深く研究を進めることは来年度の主要な課題のひとつである。 また、張力下での分子内相分離という視点から、密接に関連した問題として膜弾性と結合した膜内の相分離現象がある。本年度はそのモデルケースについて理論、シミュレーションからの考察を行い、その運動学を明らかにした。そのほか、関連する非平衡揺らぎの問題として、流体中の長距離相関についての理論的研究を行った。これらの成果は論文として出版された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Hirofumi Wada: "Dynamics of phase separation in confined two-component fluid membranes"Journal of the Physical Society of Japan. 72. 3142-3150 (2003)
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[Publications] Hirofumi Wada, Shin-ichi Sasa: "Anomalous pressure in fluctuating shear flow"Physical Review E. 67. 065302R (2003)
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[Publications] Hirofumi Wada: "Shear-induced quench of long-range correlations in a liquid mixture"Physical Review E. 68(印刷中). (2004)