2004 Fiscal Year Annual Research Report
COEベクターを用いたX線照射ヒト初代培養細胞におけるp53蓄積機構の解明
Project/Area Number |
03J50821
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山内 基弘 長崎大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | COEベクター / p53 / リン酸化 / 蓄積 / アラニン置換 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度完成した野生型、およびリン酸化部位アラニン置換型p53cDNAを組み込んだCOEベクターをヒト初代培養細胞に導入し、発現クローンを単離した。しかしながらp53蛋白質の発現を見るための実験を行うまで細胞が増殖せず、老化様の形態を示した。これは、ベクターが宿主細胞のゲノムに組み込まれる際に生じるDNA二重鎖切断にヒト初代培養細胞が極めて鋭敏に反応し、早期細胞老化が誘導されたためだと考えられる。現在は、クローンの単離はせず、ベクター導入後すぐに選択培地中で培養することで、実験に用いるまでの分裂回数を減らすことを試みている。 上記の実験と並行して、p53リン酸化がX線照射後のp53蛋白質蓄積に果たす役割を解明するため、リン酸化部位であるセリン15、スレオニン18、セリン20をアラニン置換したp53の発現ベクターをヒト癌細胞に導入して実験を行った。ベクター導入細胞におけるアラニン置換型p53蛋白質のX線照射後の蓄積、局在をウエスタンブロット法および蛍光免疫染色法で検討したところ、これら3つのリン酸化部位の単一置換型p53、二重部位置換型p53、三重部位置換型p53いずれにおいても4Gyのx線照射後、野生型p53と同様の蓄積および局在が観察された。さらにX線照射後のアラニン置換型p53の蓄積が、mRNAの増加によるものか、蛋白質の安定化によるものかを調べるためにRT-PCRを行った。その結果、3重部位アラニン置換型p53も野生型p53も照射前後でmRNAレベルに変化が見られなかった。以上の結果からX線照射後のp53蛋白質の蓄積は安定化によるものであり、その安定化にセリン15、スレオニン18、セリン20のリン酸化は関与しないことが明らかとなった。 (Yamauchi. et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.323,906-911,2004)。
|