2004 Fiscal Year Annual Research Report
生体肝移植後免疫抑制剤中止症例における免疫寛容成立のメカニズムの解析
Project/Area Number |
03J52611
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉澤 淳 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生体肝移植 / 免疫寛容 / 制御性T細胞 / γδT細胞 |
Research Abstract |
生体肝移植後、免疫抑制剤を中止した後も、良好な肝機能を維持している、いわゆる、移植臓器に対する免疫寛容状態にある患者が存在するが、その免疫寛容維持のメカニズムは不明である。免疫反応を制御するリンパ球の存在及び関与が様々な動物実験より示唆されており、生体肝移植後の患者における末梢血中の免疫反応に対し制御性に働くリンパ球の同定、機能解析を行っている。 本年の研究により、生体肝移植後免疫寛容状態の患者において、その末梢血中のCD4+T細胞の移植片提供者(ドナー)に対するアロ抗原に対する免疫反応は、第3者に比べ、低下していることが判明した。その原因として動物実験などで注目されている、CD25+CD4+制御性T細胞の関与につき調べたが、CD25+CD4+T細胞がその原因となっていないことが判明した。しかしながら、CD25+CD4+T細胞のアロ抗原に対する免疫反応抑制の抗原特異性について検討を行ったが、ドナーのアロ抗原に対して、より特異的に免疫反応を抑制していることが判明した。CD25+CD4+T細胞は、ドナー抗原に対する免疫反応の低下の原因ではないが、免疫寛容状態に貢献している可能性が示唆された。 また、移植後免疫寛容状態にある患者群において増加している末梢血中のVδ1γδT細胞について機能解析を行ったところ、リンパ球混合試験において、免疫反応の抑制性に働くことが判明した。さらに昨年までの研究でVδ1T細胞のTCRの1次構造に、ある特異的なclonalityがみられたが、本年、他の健常小児や、免疫寛容状態にない移植後患者において、同様の検討を行ったが、このような特異なclonalityは認めず、これは免疫抑制患者に特徴的な所見であることが判明した。このことから、移植後、免疫寛容状態になった患者の血中、にある特異的な抗原を認識し増殖したVδ1T細胞が存在しそれが免疫寛容状態に関与していると考えられた。
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