Research Abstract |
アメリカ合衆国およびカナダでは,高齢化社会の先進国として,高齢者のための特別な機関・制度が設けられ,各種立法・政策・措置において高齢者に対する配慮がなされている。今回の調査研究は,両国に連邦と各州の法務省(司法省)をはじめとする関係官庁,栽判所,大学(研究機関),実務現場を訪問し,担当者に直接インタビューするという形熊をとり,わが国にあっては入手することができない多数の一次資料(各種官庁統計等)を収集することができた。また,訪問先も,ワシントンD.C.,カリフォルニア,ミシガン,アラバマ,ジョージア,サウスカロライナ,ノースカロライナ,ニューヨーク(以上,合衆国),オタワ,ケベック,ブリティッシュコロンビア(以上,カナダ)と地域的にも広範囲におよび,分野的にも,高齢化社会の法・福祉政策,高齢消費者保護,生命の終焉をめぐる諸問題(安楽死立法等),高齢者の犯罪と犯罪者の処偶,民間レベル(たとえば,全米退職者協会)の活動状況の多岐にわたる情報資料を収集できた。 特に,今回の調査研究で明らかになったことは,合衆国,カナダともに,高齢者に対する各種政策は連邦よりも州レベルにおいてより積極的に展開されているということであり,それは正に高齢者という対象それ自体およびそのニーズの多様性から必然に生じる結果であるということである。要するに,全国レベルにおける画一的,硬直的な政策展開は高齢化社会における法的諸問題の解決に適当でないということである。今後,わが国においても,多様かつ柔軟な対策が講じられなければ,高齢化社会に必然的に生じる法的諸問題に対処することができないであろうことが予測される。
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