1993 Fiscal Year Annual Research Report
SCIDマウス系における形質細胞腫発症機構の分子細胞遺伝学的研究
Project/Area Number |
04044073
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大野 真介 金沢大学, がん研究所, 助教授 (70019868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FRANCIS Wien カロリンスカ研究所, 腫瘍生物部, 教授
松島 綱治 金沢大学, がん研究所, 教授 (50222427)
村上 清史 金沢大学, がん研究所, 助教授 (90019878)
早川 純一郎 金沢大学, 医学部, 教授 (50110622)
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Keywords | SCIDマウス / 形質細胞腫 / 分子細胞遺伝学 / 染色体転座 / Abelson白血病ウィルス |
Research Abstract |
平成4年度において、SCID起源と推定される2例の形質細胞腫(ABPC-SCID-IM-B,IM-D)を誘発した。両形質細胞腫はいずれもt(6;15)染色体転座を示し、少なくともこの転座型をもつ形質細胞腫の標的細胞は、pro〜pre-B段階にあるB細胞と推論された。さらに、上記両形質細胞腫のアロタイプはいずれも“b"ではなく、従って、いわゆる“leaky"SCIDマウスに発症した可能性も否定された。 ところで、IM-B,IM-Dは、いずれもIgA産生形質細胞腫であり、さらに、そのアロタイプは“a"であった。SCIDマウスは、そのIgH遺伝子領域がC57BL/Kaマウス由来の“b"アロタイプ型である以外、すべてBALB/c遺伝子型をもつ。 また、本実験に用いられた、マーカー染色体をもつBALB/c6.15は、AKR6.15マウスをBALB/cマウスに戻し交配して得られたマウスであり、いくつかのAKRマーカーを残している。そこで、SSLP(Simple Satellite Repeat Length Polymorphism)解析により、IM-B,IM-Dと、donor BALB/c6.15起源をもつ形質細胞腫IM-A,C,Eとを比較した。(1)D12Mit4は、第12染色体に存在し、中心体より27cMの位置にある。IM-A,C,EがともにAKRタイプであったのに対し、IM-B,IM-DはいずれもBALB/cタイプであった。(2)ところが、第12染色体の中心体より50cMに位置するD12Mit7では、IM-A,C,E,B,DすべてBALB/cタイプのSSLPを示した。(3)65cMに位置するIgh-C遺伝子は、得られた5例の形質細胞腫すべてについて“a"アロタイプ(BALB/c型)であった。D12Mit7は、SCIDマウスではB6タイプである。 以上の知見より、SCIDマウスに発症した形質細胞腫ABPC-SCID-IM-B,IM-Dでは、第12染色体の27より50cMの間で遺伝子組み換えが起こり、結果として“a"アロタイプをもつIgA産生細胞となったものと考えられた。この機構の説明は、現時点では極めて困難であるが、平成6年度には何らかの糸口を掴みたいと思っている。
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