1992 Fiscal Year Annual Research Report
臓器特異的癌転移機構に関する研究:サイトカインと接着因子の役割
Project/Area Number |
04152012
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
熊谷 勝男 東北大学, 歯学部 (00005018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樗木 俊聡 東北大学, 歯学部, 助手 (50233200)
花海 清 東北大学, 歯学部, 助手 (50005063)
力石 秀実 東北大学, 歯学部, 助手 (70091767)
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Keywords | 臓器特異的転移 / GM-CSF / CD44分子 / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
癌の臓器特異的転移機構に、癌細胞の産生するGM-CFSやIL-6(あるいはIL-1)などのサイトカインと、それぞれの癌細胞上に発現されている接着分子とがどのような役割を担っているのかを明らかにする目的で研究を行い、新たに以下のことが明らかになった。1.マウス肺転移性腫瘍は、GM-CSFと接着分子CD44を発現しており、肝転移性腫瘍はIL-6/IL-1とICAM-1ならびにLFA-1分子を発現し、それぞれ特徴的である。肺転移性腫瘍はその産生するGM-CSFにより、血管内皮などのヒアルロン酸(CD44に対するリガンド)産生を増強し、癌細胞の肺組織への接着を有利にしていることが組織染色により推測された。2.遺伝子導入実験では、非転移性の腫瘍(MethA)にGM-CSF遺伝子を導入して、多数のトランスフェクタントが得られた。このうち、GM-CSF産生性が安定なクローンではCD44分子発現の増強ならびにヒアルロン酸との結合能の亢進が観察されると同時に、顕著な肺転移能を示すようになった。また、これらの遺伝子導入株の肺転移は抗GM-CSF抗体投与により抑制された。3.同様に、非転移性腫瘍(FM3A/R)にCD44遺伝子を導入したトランスフェクタントも得られ、ヒアルロン酸との結合能の獲得が確かめられた。現在、GM-CSFとCD44分子のそれぞれの遺伝子導入株の肺転移能を詳細に解析中である。要約すると、マウス腫瘍の肺転移にはサイトカインGM-CSFと接着分子CD44が深く関わっていることが確かめられた。とくに、癌細胞の産生するGM-CSFは、CD44分子発現の増強、肺組織でのCD44分子のリカンドであるヒアルロン酸の誘導、CD44とヒアルロン酸との結合の促進など、広範な作用を示す結果が得られた。癌細胞の産生するGM-CSFのこのような作用にはGM-CSFのシグナル伝達の関与も示唆される。
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[Publications] A.Kusumi: "Lymphotoxin activates hepatic T cells and simultaneously induces profound thymic atrophy." Immunology. 77. 177-184 (1992)
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[Publications] Y.Endo: "GM-CSF and G-CSF stimulate the synthesis of histamine and putrescine in the hematopoietic organ in vivo." Immunology Letters. 33. 9-14 (1992)
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[Publications] 樗木 俊聡: "転移の臓器親和性を決定する接着分子と増殖因子" 実験医学. 10. 236-241 (1992)
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[Publications] 熊谷 勝男: "癌転移とオートクライン/パラクライン" Oncologia. 25. 394-699 (1992)
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[Publications] 新田 康隆: "腫瘍の転移とサイトカイン" Annual Review 免疫. 173-182 (1993)
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[Publications] 新田 康隆: "マウス可移植性腫瘍における肺転移能と接着分子:CD44の発現と相関" 東北大学歯学雑誌. 12. (1993)
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[Publications] 熊谷 勝男: "サイトカインと疾病" 日本医学館, 190 (1992)
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[Publications] 熊谷 勝男: "マクロファージ実験マニュアル" 講談社, 250 (1992)