1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04152023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 祐一 東京大学, 応用微生物研究所, 助教授 (90164798)
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Keywords | 発がんプロモーター / レセプター / 結合タンパク / フォルボールエステル / レチノイド / アンタゴニスト / プロテインキナーゼC |
Research Abstract |
発癌プロモーション過程の抑制・逆行による癌の予防・治療の可能性に対して科学的基盤を得る目的で研究を遂行した。 第1に、発癌プロモーターの作用機械解明を目指し、フォルボールエステル類の受容体候補蛋白の単離精製・構造決定・クローニングを行おうとした。プロテインキナーゼC以外のフォルボール結合蛋白(TBP)について、そのリガンド依存的な核内移行性を示すと共に、TBPの生体内におけるリガンドの候補物質を同定しつつある。TBPの単離も成功に進行しつつあり、SDS-PAGE上でのバンドが特定できつつある。現在、そのバンドの内部アミノ酸配列決定を行っている。N未端アミノ酸配列はTBPのN未がブロックされているために決定できなかった。 第2に、レチノイドが発癌プロモーション過程を抑制することから、これを生体内における発癌プロモーターのアンタゴニストである可能性を考えた。レチノイドの薬理研究は大きく進展し、その白血病などでの有効性は確立したところとなっているが、正常状態での生体内のレチノイドが癌発生に及ぼす効果は不明である。これを知るために、レチノイデアンタゴニストの開発が必須と考え、本年度、新規にベンズイミダゾール系のレチノイドアンタゴニストの創製に成功した。 フォルボールエステル類を初めとする発癌プロモーターの多様な生物作用は、プロテインキナーゼCを介した機構では説明し切れない。本研究課題で構造決定しようとしているTBPは、発癌プロモーター依存的な転写調節因子である可能性が高く、より精力的な研究が必要である。特にTBPの生体内リガンドは、レチノイドと共に発癌プロモーション過程に深くかかわる可能性があり、その構造を元に有効な発癌化学予防薬が開発できるのではないかと期待している。
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[Publications] 橋本 祐一: "レチノイド作用機構研究の展開" ファルマシア. 28. 1096-1100 (1992)
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[Publications] 首藤 絋一,橋本 祐一: "レチノイドとがん" CRC(Cancer Research and Clinics). 1(4). 108-116 (1992)
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[Publications] 橋本 祐一: "レチノイン酸レセプター:レチノイドの分子機構とその異常" 医学のあゆみ. 161. 67-71 (1992)
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[Publications] H.Tanaka,H.Kagechika,E.Kawachi,H.Fukasawa,Y.Hashimoto,K.Shudo: "Bace-catalyzed isomerization of retinoic acid:Synthesis and differentiation-inducing activities of 14-allcylated all trams-,13-cis,and 20,14-retro-retinoic acid" Journal of Medicinal Chemistry. 35. 567-572 (1992)
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[Publications] Y.Matsushima,E.Kawachi,H.Tanaka,H.Kagechika,Y.Hashimoto,K.Shudo: "Differentiation-inducing activity of retinoic acid isomers and their oxidized analogs on human promyelocytic leukemia HL-60 cells." Biochemical and Biophysical Research Communications. 189. 1136-1142 (1992)
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[Publications] 橋本 祐一: "レチノイド研究の最近の動向" 免疫・Immunology Frontier. 2. 168-171 (1992)
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[Publications] 橋本 祐一,首藤 絋一: "レチノイド" 講談社サイエンティフィク, 188 (1992)