1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04205011
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
八田 有尹 東北大学, 工学部, 教授 (70005502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 裕史 東北大学, 工学部, 助手 (50236022)
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Keywords | 強誘電性液晶 / 液晶薄膜 / 分子配向 / 界面相互作用 / 赤外吸収 / 表面電場 / 分子振動 |
Research Abstract |
強誘電性液晶薄膜の配向に及ぼす固体表面の影響を分子振動スペクトルにより明らかにして、強誘電性液晶の表面誘起配向を支配する機構を解明することが本研究の目的である。液晶試料として(s)-4-(α-methylheptyloxy)-4-n-octylphenyl-4-oxycarbonylbiphenyl(MHOPOB)を用いて得られた成果について以下に述べる。1)島状構造を持つ銀蒸着膜に赤外光を入射すると、ミクロな銀表面から約5nmの距離に及ぶ強い振動電場を誘起することができ、この範囲にある分子の配向情報が優先的に得られる。これを利用して銀蒸着膜上のMHOPOBの赤外吸収スペクトルを測定したところ、バルクではSmC*強誘電相を形成する温度においてMHOPOB分子はミクロな銀表面に対して平行に配向することが分かった。また、バルクでは等方相となる温度においては、この異方性は消失し無秩序となった。一方、反射吸収スペクトルから平坦な銀表面上では分子の垂直配向性が確認された。それゆえ、SmC*相温度における平行配向は銀表面の凹凸を媒介とする液晶の弾性エネルギー安定化によって生じたと考えられる。2)基板表面との化学的相互作用を明らかにするために、ポリビニルアルコール(PVA)膜上に展開した膜厚10nmのNHOPOB液晶の赤外吸収を測定し、SmC*、SmA相のほか、等方相温度においても分子はPVA膜表面に対してほぼ平行に配向することが分かった。特に、PVAのC-O-H結合に基づく振動バンドがMHOPOB分子との相互作用によりシフトすることが見い出された。他方、NHOPOBのエステル結合のC=O伸縮振動が一部低波数測に移動し、同結合のC-O-C逆対称伸縮振動が高波数側に移動することが分かった。これらの事実は界面におけるMHOPOB分子がエステル結合のO原子を介して、PVA膜のOH基と水素結合を形成していることを強く示唆する。このように、本研究により強誘電性液晶の表面誘起配向の機構について分子レベルの考察が可能であることが初めて示された。
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