1992 Fiscal Year Annual Research Report
クラスターの構造と機能発現との相関に関する理論的研究
Project/Area Number |
04205062
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平尾 公彦 名古屋大学, 教養部, 教授 (70093169)
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Keywords | クラスター / 擬回転反応 / 分子軌道法 |
Research Abstract |
本研究は,クラスターおよび分子集合体の示す諸機能がそれらの構造とどのような相関関係にあるかを理論化学の立場より解明し、クラスターの発現する諸現象の理解に役立つ新しい概念と理論的方法論の提出を目的としている.本年度は,(1)リン酸エステルのエステル交換反応における5配位中間体の擬回転反応に関する研究,(2)遷移金属イオンの水交換反応に関する研究,(3)化学反応ポテンシャル・エネルギー曲面を高精度に記述する理論の開発等を行った.(1)第3周期以降の元素は,異常原子価状態を容易にとり,多様な反応性を示す.このため,生体内での触媒反応や,合成反応において重要な役割を果たしている.昨年度に引続き本年度もリン化合物を取り上げ,ジアルキルヌクレオチドのモデル分子の擬回転反応を分子軌道法を利用して研究し,特にエステル交換反応に対する置換基効果を調べた。擬回転反応の反応障壁は非常に小さくジメチル,ジ-t-プチル基の間の置換基効果の差は認められなかった.計算結果より,一旦5配位中間体が形成されれば,擬回転反応は容易に進行することが示された.ジ-t-プチルエステルの反応が低いのは,5配位中間体の擬回転反応に伴って起こるリポース環の反転が起こり難いせいではないかと結論された.(2)第1遷移金属のイオンには,酵素の活性中心となって酸化環元反応,加水分解反応,転移反応などの触媒として作用しているものがあり興味がもたれている.本研究では,第1遷移系列の金属イオンの溶媒交換反応,反応機構や反応経路を理論的に研究した.亜鉛二価イオンの水交換反応では,3角両錐または正方錐構造の5配位構造に水分子が2個弱く結合した中間体を経て進行し,5角双錐構造の7配位中間体は不安定である.これは,実験的にいわれている解離機構で反応が進行し,交換機構ではないことが明らかになった.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Wasada: "Theoretical Study of the Reactions of Pentacoordinated Trigonal-Bipyramidal Compounds:PK5,PF5,PF4H,PF3H2,PF4CH3,PF3(CH3)2,P(O2C2H4)H3,P(OC3H6)H3 and PO5H4-" J.Amer,hem.Soc.114. 16-27 (1992)
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[Publications] K.HIRAO: "Multireference Moller-Plesset Method" Chem.Phys.Lett.190. 374-380 (1992)
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[Publications] K.HIRAO: "Floating Functions Satisfying the Hellmann-Feynman Theorem:Single Floating Scheme" J.Comput.Chem.13. 457-467 (1992)
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[Publications] K.HIRAO: "Analytic Derivative Theory Based on the Hellmann-Feynman Theorem" Can.J.Chem.70. 434-442 (1992)
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[Publications] K.HIRAO: "Multireference Moller-Plesset Perturbation Treatment of Potential Engrgy Curves of N2" Intern.J.Quantum.Chem.S26. 517-526 (1992)
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[Publications] K.HIRAO: "Multireference Moller-Plesset Perturbation Theory for High-Spin Open Shell Systems" Chem.Phys.Lett.196. 397-403 (1992)