1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04208202
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
吉田 尚弘 富山大学, 理学部, 助手 (60174942)
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Keywords | 骨化石 / リン酸塩 / 酸素同位体比 / 環境水 / ゾウ |
Research Abstract |
1.旭川から鹿児島まで、日本国内の動物園で飼育されていた現生象(アフリカ象、インド象、マルミミ象)の歯と骨の酸素同位体比の測定を行った。北海道内の象がもっとも酸素同位体比が低く、北から南に向かうにつれて同位体比が高くなる傾向を示した。しかしながら、横浜・金沢動物園と名古屋・東山動物園の象がもっとも高いという予想外の結果が得られた。横浜の2個体は、インド・ボンベイから、名古屋の個体はアフリカから到着後、比較的早い時期に脱落した歯であることがわかり、解析結果はこの理由から説明された。 2.酸素同位体比が測定された現生象について、動物園内で飼育に用いられた飲料水の酸素同位体比を測定した。旭川から鹿児島に向かい、水の酸素同位体比は高くなるという一般的な傾向が得られた。このことはこれまで知られている環境水の酸素同位体比の緯度効果と内陸効果で説明される傾向と調和する。 3.現生象の骨の酸素同位体比も、これまでに調べられた他の数種の哺乳動物と同様に、環境水を飲み水として体内に取り込んだ後、動的平衡に到った体液と骨が同位体交換平衡になることで、環境水の酸素同位体比と良い相関があると考えられた。また、象の骨の酸素同位体比は環境水の酸素同位体比を規定している緯度・年平均気温などとも良い相関があることが分かった。 4.環境水の酸素同位体比に加えて、相対湿度が現生象の骨の酸素同位体比と逆相関があることが分かった。相対湿度の影響は、地理的・気候的な外的因子(環境水の酸素同位体比を規定する)と象の食性・生理・代謝などの内的因子(体内水の酸素同位体比を規定する)が関わりどちらも骨の酸素同位体比に対して負の相関を与えることが考えられた。本研究の解析結果はこの予想と矛盾しない。
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[Publications] C.Mizota: "Oxygen isotope composition of natural phosphates from volcanic ash soils in the Great Rift Valley of Afriou and etst Java,Indonesia" Geoderma. 53. 111-123 (1992)
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[Publications] 中井 信之: "出土哺乳動物の骨・歯・角を用いる ^<14>C年代測定と安定同位体比による生存当時の環境解析" 愛知県埋蔵文化財センター調査報告書. 31. 263-271 (1992)
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[Publications] Tsunogai,S.: "Radiocarbon anomaly found in aquicultaral scallops suspended in coastal sea" J.Oceanogr.49. 31-37 (1993)
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[Publications] N.Yoshida: "Oxygen isotope ratio in fossil bone phosphate of some Japanese mammals" Proceedings of International Symposium on Glogal Chenge. (1993)
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[Publications] 吉田 尚弘: "哺乳動物の骨と飲料水の酸素安定同位体組成の関係" モンゴロイド. 14. 26-30 (1992)
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[Publications] 吉田 尚弘: "哺乳動物の骨と環境水の酸素同位体比" 学術月報. (1993)
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[Publications] 吉田 尚弘: "酸素同位体からみる飲料水;in「考古学の世界」" ぎょうせい, (1993)