1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04218210
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
榊原 学 東海大学, 開発工学部, 教授 (10135379)
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Keywords | 連合学習 / 視細胞 / 有毛細胞 / 膜電位固定 / ホジキン・ハクスレー方程式 |
Research Abstract |
システム工学的に脳・神経系をみると、遺伝子のレベルで予め定められた入出力関係が、生まれてからの経験による様々な環境に適応するよう改変される。この過程を理解する目的で、光を条件刺激、回転を無条件刺激とするウミウシの連合学習をとりあげ、その神経系でみらるれ適応的変化を解析した。本補助金による研究課題は、連合学習の初期過程となる光受容器(視細胞)と平衝感覚器(有毛細胞)ニューロンをそれぞれ生理実験から得られる実験データをもとにして、その数理モデルを構築し、学習・記憶の過程を工学的に応用する際の基礎とするところにある。これまでの研究によりウミウシ連合学習による最初の変化はB型視細胞の細胞体でのKイオ ン電流の減少として観察されることが明らかになり、同様の現象は平衡感覚系の有毛細胞においてもみられると予想される。そこで膜電位固定法により、これらニューロンのイオン電流を分離・計測し、得られたデータを神経モデルとしてよく知られているホジキン・ハクスレーの式に適用し、そのパラメータ推定を行った。B型視細胞には3種のK電流,すなわちIa(初期急速活性型電流),Ic(細胞内カルシウム依存性電流),Ik(遅延性整流電流)のあることが知られ、これらは有毛細胞にも基本的に備わっていることが本研究で明らかとなった。ところが、これらK電流の電位依存性にはB型視細胞と有毛細胞の間には大きな差が認められた。B型視細胞では膜電応-60〜0mVの範囲ではIa,Icが主要成分でIkの関与はわずかであったが、同じ電位範囲において有毛細胞ではIa,Ikが主要な電流成分であった。これら電流成分の動的特微をモデル化し、連合学習にみられるB型視細胞のIa,Icの減少は、光応答振中の増大と脱分極の持続をもたらすことが本研究で明らかになった。この現象は、これまで光の順応状態を実験的に規定することが困難で観察されていなかった。
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[Publications] M.Sakakivara,etal: "Recomstruction of ionic currents in molluscan photorecrptor" Biophysecal Journal. (1993)
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[Publications] M.Sakakibara,D.L.Alkon: "Associative learning in the sea snail Hermissenda" Proceedings of International Symposium on Neural Information Processing. 177-180 (1992)
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[Publications] M.Sakakibara,etal.: "Propagated calcuim modulates the calcium dependent potassium current by the activation of GABAB receptor at the atonal branch in the type B photoreceptor of Hermissenda" Annals of New York Academy of Scirnce. (1993)
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[Publications] D.L.Alkon,etal.: "Molecular and biophysical steps in the storage of associative memory" Annals of New York Academy of Science. (1993)
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[Publications] 榊原 学: "イオンチャネル(第5章)" メジカルビュー, (1993)