1992 Fiscal Year Annual Research Report
短距離相互作用をもつ二次元、三次元スピングラスの動的性質
Project/Area Number |
04231203
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白倉 孝行 東北大学, 工学部, 助手 (90187534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 史卓 東北大学, 工学部, 助教授 (90124627)
猪苗代 盛 東北大学, 工学部, 教授 (20005218)
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Keywords | スピングラス / サイトランダムモデル / オーダーパラメーター分布関数 / 混合相 / フラストレーション |
Research Abstract |
三次元±Jイジングモデルは有限温度でスピングラス(SG)相へ相転移するのは確からしいが、その低温相の性質はまだ明らかになっていない。現在、低温相のモデルとして三つの描像が提案されている。どの描像が正しいのかを明らかにするために、昨年度は計算機実験によりこのモデルを調べたが、平衡状態の性質としては確定的な結果を得るには至らなかった。 一方、四次元±Jイジングモデルに対しては、強磁性ボンドの割合が0.5の場合に低温相がParisi相であることを支持する結果が最近幾つか提出されている。もし低温相がParisi相ならば、多重臨界点近傍でオーダーパラメーター分布関数P(q)に混合相の徴候を見ることができるはずである。さらに、四次元系は三次元系に比べてSG転移温度が高いので、混合相転移温度も高くなり、MCシミュレーションによる研究がより容易になると思われる。このような動機により四次元系を調べた結果、多重臨界点近傍の強磁性側でのP(q)は、温度の低下とともに、まず常磁性-強磁性転移によるピークの移動を示し、さらに低温で、2ピーク構造への変化が見られた。これは混合相転移を示している。サイズ依存性の点から、熱力学的極限でこの相転移を明確にすることが今後の課題である。 上で述べたモデルはボンドモデルと呼ばれるものだが、サイトモデルを考えると、フラストレーションのはいり方が異なり、ボンドモデルとは定性的に異なる結果が得られることがわかった。具体的に調べたモデルは、二次元イジングモデルである。ボンドモデルのときには有限温度でSG転移がないことは良く知られた事実であったが、サイトモデルでは有限温度でSG転移をすることを、計算機シミュレーションにより始めて確かめることができた。現実の物質はボンドモデルよりサイトモデルのほうがはるかに多く、三次元系などでどのようになっているのかなど、大変興味深い問題が多く残されており、今後それらを検討してゆきたい。
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[Publications] T.Shirakura: "Breakdown of the Strong Umiversality of the Three-Dimenrional ±J Sring Model" Journal of Phyrical Society of Japan. 61. 3417-3418 (1992)
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[Publications] T.Shirakura: "AC Susceptibility of the Three-Dimensional ±J Sring Model" Springer Proceedings in Physics. 70. 244-245 (1992)
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[Publications] M.Iguchi: "Hybrid Monte Carlo Spin-Dynamics Simulation of Metallic Spin-Glass Alloys" Physical Review B. 47. (1993)