1992 Fiscal Year Annual Research Report
高励起・連続状態の関与する反応に関する量子化学的ならびに動力学的研究
Project/Area Number |
04243207
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
石田 俊正 静岡大学, 教養部, 助手 (50212890)
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Keywords | 高励起状態 / 連続状態 / ペニングイオン化 / 準安定励起原子 / 分子軌道法 |
Research Abstract |
本研究では、イオン化連続状態に埋もれている高励起共鳴状態の自動イオン化、具体的には、ペニングイオン化を取り上げ、高励起共鳴状態およびイオン化状態のポテンシャル面、両状態間の遷移確率を理論的に求め、準安定励起原子A^*による気相分子Mのペニングイオン化過程(M+A^*→M+A+e^-)の機構を明らかにすることを目的としてきた。 今年度は、現在までに相互作用が引力的であるていわれているH_2O-He^*(2 ^3S)→H_2O^+( ^2B_1, ^2A_1, ^2B_2)+He+e^-の系の計算をさまざまな配向について行い、共鳴状態のポテンシャル、イオン化状態のポテンシャル、両状態間の遷移に対応するエネルギー幅を求めた。以上から、実測のスペクトルの相対バンド強度がσ(B_1)>σ(A_1)>σ(B_2)となること、および、その速度依存性を安性的に説明する結果を得た。また、昨年度のN_2-He^*の系と同様、イオン化に関与する標的分子の分子軌道の広がりの大きい方向、イオン化状態が全対称表現となる状態に対応するエネルギー幅が大きいことがわかった。これは、He^*ペニング反応において、電子が、分子と励起原子を結ぶ軸の方向に放出されやすいこと、および、励起原子と標的分子の軌道の重なりが重要であることを示すものである。一方、イオン化状態が複数ある場合に成り立つ断面積の表式を導き、昨年度得られたN_2-He^*→N_2^+( ^2Σg, ^2Πu, ^2Σu)+He+e^-の系に関して得られていたポテンシャルとエネルギー幅を用いて断面積を求めた。結果は、低衝突エネルギーでΣバンドが強調され、高衝突エネルギーでΠバンドが強調される実験結果を定性的に再現した。 今後は、ペニングイオン化の過程をさらに明らかにし、より複雑な系を議論する際に見通しのよいモデルを提唱することを目指す。
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[Publications] T.Ishida: "Theoretical study on Penning ionization with multi-exit channels:N_2-He^*(2 ^3S)→N_2^+( ^2Σ_g, ^2Π_u, ^2Σ_1)+He+E^-" Chem.Phys.Lett.191. 1-6 (1992)
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[Publications] I.Ishida: "On the asymptotic behavior of Hartree-Fock orbitals." Theor.Chim.Acta. 81. 355-364 (1992)