1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04246249
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
杉下 守弘 (財)東京都神経科学総合研究所, リハビリテーション研究部門, 副参事研究員 (10114513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 啓子 (財)東京都神経科学総合研究所, リハビリテーション研究部門, 主事研究員 (90154640)
石島 武一 東京都立神経病院, 副院長 (30048970)
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Keywords | 言語性記憶 / 側頭葉前部切除術 / 言語優位半球 / アミタールテスト / 東大脳研式記銘力検査 |
Research Abstract |
側頭葉と記憶の関係については、両側の側頭葉内側部の損傷によって全般的な記憶障害が生じ(Scoville and Milner1957)、左側頭葉前部損傷によって言語性記憶障害が生じると言われている(Meyer and Yates1955)。通常、言語優位半球は左半球であるため、言語性記憶障害は言語優位半球と同側の左側頭葉前部の切除によって生じると考えられる。しかし、言語優位半球が右または両側の例を対象にして、側頭葉前部の損傷と言語性記憶障害との関係を検討した研究は見あたらない。我々はこの問題について検討した。 対象は、難治性てんかんの外科的治療のため側頭葉前部切除術を受けた症例のうち、アミタールテストによって言語優位判球が右判球であった4例と両半球であった2例の計6例である。右言語優位判球4例のうち2例は右側頭葉前部、2例は左側頭葉前部が切除された。両側言語優位判球2例のうち1例は右側頭葉前部、1例は左側頭葉前部が切除された。対象とした6例は1例が左利きであり、他は全て右利きであった。これらの症例の言語性記憶を調べるために、東大脳研式記銘力検査を手術前と手術の2週間後に行った。 右言語優位半球4例の中で、右側頭葉前部を切除した2例のうち1例のみで言語性記憶障害が見られた。左側頭葉前部を切除した2例はいずれも言語性記憶障害を示さなかった。一方、両側言語優位半球2例の中では、右側頭葉前部を切除した1例のみで言語性記憶障害がみられた。 これらの結果より、右半球が言語優位半球である場合には、右側頭葉前部損傷では、言語性記憶障害が生じる場合とそうでない場合があり、左側頭葉前部損傷では言語性記憶障害が生じない可能性が考られる。両半球が言語を司っている場合には、右側頭葉前部が切除されると言語性記憶障害が生じる可能性が考えられる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 杉下 守弘: "老化と記憶,高次機能" BRAIN MEDICAL. Vo1.4No.2. 27(163)-30(166)~ (1992)
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[Publications] 杉下 守弘: "脳のどの部位が記憶と関連しているか" こころの科学. 46. 26-32 (1992)