1992 Fiscal Year Annual Research Report
個体発生途上における神経細胞のプログラム死を起こすキラー液性因子
Project/Area Number |
04258220
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Research Institution | Hiroshima Prefectural University |
Principal Investigator |
三羽 信比古 広島県立大学, 生物資源学部, 助教授 (00142141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長尾 則男 広島県立大学, 生物資源学部, 助手
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Keywords | プログラム細胞死 / キラー蛋白質 / DNA断片化 / ヌクレオソーム / 単離核 / 高性能電気泳動クロマトグラフィ / 神経芽腫細胞 |
Research Abstract |
(1)脳神経系のプログラム細胞死を起こすキラー蛋白質の分子的実体として、脳のプログラム死期に産生させる新生期脳由来抗癌因子NBCFを我々は欧米に先行して同定した。NBCFはN末端アミノ酸14残基の配列よりcystatin supergene familyの一員と見なせるが、このfamilyのmemberには脳発生過程に特異的に発現するa_2HS glycoproteinやfetuinがあり、NBCFを含めてこのfamilyの脳発生過程への関与が考えられる。(2)ヒト神経芽腫NB1細胞はNBCF投与6時間後に細胞死に先行して核凝縮や細胞質萎縮などapoptosis様な変性像を示すが、この時にDNA抽出しアガロース電気泳動が調べた。この結果、(1)NBCF感受性の未分化NB1細胞から単離した核にNBCFを作用させても単離核に細胞膜標品や細胞破砕液を添加してもDNA断片化は起こらなかった。したがってNBCFは直接に核DNAに作用するのではなく、whole cellにbuilt inされた核外因子を介すると考えられる。(2)NBCF感受性NB1細胞は、もはやNBCF除去しても細胞死を免れ得ない投与6時間後という短時間で、既に核DNAが180-210bp単位で断片化する。したがってNBCFは間接的にendonucleaseの活性化をもたらすのであり、endonuclease遺伝子の発現には関与しないと示唆される。(3)細胞死がまだ進中行であるNBCF投与12時間であるにも関わらずDNA断片化は既に停止していて部分的断片化に止まった。NBCF抵抗性の分化NB1細胞から分泌される蛋白性NBCF拮抗因子(43kDa,塩基性)を添加するとNBCFによる細胞殺傷は阻止されるが、DNA断片化は僅かに起こった。したがって、核DNAのすべてのnucleosome linker siteに作用するのではなく、loosened siteだけでの切断で細胞死を引き起こすのに充分と考えられる。(3)NBCF産生期に先行する胎生中期のマウス脳抽出液から、高性能電気泳動クロマトグラフィ(HPEC)を用いてNBCFとは異なる細胞傷害性蛋白質(約300kDa、塩基性)を見出した。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] 三羽 信比古,長尾 則男: "脳神経系のプログラム細胞死とキラー蛋白質。" 基礎老化研究. 16. 86-90 (1992)
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[Publications] 三羽 信比古: "脳神経系のプログラム細胞死と新生期脳由来抗癌蛋白質NBCFによる細胞死の機序と生理的役割。" 生物物理. 32. 135-140 (1992)
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[Publications] Nobuhiko MIWA: "Antitumor factor secreted from the brain during the ontogeny:involvement of intracellular calcium ions and anti-killer factor in tumor cell killing" Rep.Res.Meat Prod.10. 349-353 (1992)
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[Publications] Nobuhiko MIWA: "Inhibition by proteinic anti-NBCF factor of nuclear DNA cleavage induced by neonatal brain-derived carcinostatic factor(NBCF)in neuroblastoma cells" Proc.Jpn.Cancer Assoc.51. 163 (1992)
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[Publications] Nobuhiko MIWA: "Reduced susceptibility of differentiated neuroblastoma cells to neonatal brain-derived carcinostatic factor(NBCF):involvement of NBCF-antagonizing factor and intracellular calcium ions." Neurochem.Res.18. (1993)
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[Publications] 三羽 信比古: "細胞増殖制御機構におけるアスコルビン酸の役割:ビタミンC活性の安定化した誘導体による新規な研究展開。" 医学のあゆみ. 164. (1993)
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[Publications] Katsuhiro KAGEYAMA: "Rapid measurement of lactic acid in tumor cells by gas chromatography:Effects of oxidative phosphorylation inhibitors on hyperthermia." Jpn.J.Hypertherm.Oncol.8. 329-330 (1992)
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[Publications] Katsuhiro KAGEYAMA: "Cytotoxicity of ^<14>C-labeled ascorbic acid increasingly incorporated into sparsely attached tumor cells in combination with hyperthermia." Jpn.J.Hypertherm.Oncol.10. (1993)
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[Publications] 三羽 信比古: "脳神経系のプログラム細胞死と癌細胞殺傷性蛋白質NBCF。今西二郎編「がんに対する非免疫系の生体防御機構」" 共和書院, 33-49 (1993)
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[Publications] 三羽 信比古: "発生過程でのプログラム細胞死とキラー蛋白質:自殺遺伝子への発現抑性は老化過程で解除されるか。藤本大三郎編「老化のメカニズムと制御」" アイピーシー, (1993)
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[Publications] 三羽 信比古: "三羽信比古(編)「細胞死のバイオサイエンス」" 東京書籍, 1-240 (1993)