1992 Fiscal Year Annual Research Report
コリシン・リシス遺伝子による大腸菌蛋白質の分泌放出機構
Project/Area Number |
04259204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
正木 春彦 東京大学, 農学部, 助教授 (50134515)
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Keywords | コリシン / プラスミド / 大腸菌 / タンパク質分泌 / リポタンパク質 / 遺伝子クローニング / コドン / シグナルペプチド |
Research Abstract |
コリシンE2、E3は大腸菌Co1プラスミドの作る殺菌性蛋白質で、N末端シグナル配列を持たないにもかかわらず大量に培地中まで放出される。この現象には、コリシンオぺロン最下流のリシス遺伝子にコードされる、膜局在の微小なリポ蛋白質が必要で、このリシス蛋白質の高発現は宿主大腸菌の溶菌・致殺をも引き起こす。 1.リシス蛋白質の作用点の遺伝学的探索:リシス蛋白質の宿主側の標的装置は、もし遺伝子増幅により存在量が増えれば、リシス遺伝子を高発現させても致死を免れると考え、リシス遺伝子を持つ多コピープラスミドそのものをベクターとした大腸菌染色体断片をショットガンクローニングし、リシス遺伝子を誘発されても死なないクローンを5株得た。それぞれの断片の遺伝子座を、大腸菌整列クローンを用いて推定した。今後、これらのプラスミドにおいて、リシス蛋白質が現実に合成されている(にもかかわらず致死とならない)ことを確認したのち、遺伝子断片の一次構造を決定して、リシス蛋白質の発現に耐性となった原因あるいはリシス蛋白質との相互作用を検討する予定である。 2.リシス遺伝子発現について:リシス遺伝子の発現は、生育速度が遅いほど相対的に高く、またオペロン誘発後の時間にかかわらず一定の菌濃度に達して初めて表現型が現れる特異な性質を示す。一方コリシンオペロンは、高発現遺伝子群であるにもかかわらず大腸菌の不適合(希少)コドンを多用しており、特にリシス遺伝子のシグナル部分の(Leu)_4は、存在量が生育速度と負の相関を持つRNAleuに対応するコドンのみからなっており、希少コドンが生理状態に対するセンサーになって可能性が考えられた。そこでこの近傍のコドンを適合コドンに変えた変異体を作製した。これは野生型に比べて、非誘発時の発現が(リークにより)若干上昇したが、誘発時の発現パターンに大きな変化はなく、上記の可能性はもしあっても寄与は小さいことが推定された。
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