1992 Fiscal Year Annual Research Report
干潟底生群集の構造決定に及ぼす生活史初期の個体群変動と偶発的種間関係の影響
Project/Area Number |
04264106
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
玉置 昭夫 長崎大学, 水産学部, 助教授 (40183470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 靖 九州女学院短期大学, 児童教育学科, 助教授 (90040063)
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Keywords | 干潟底生群集 / 十脚甲殻類 / ニホンスナモグリ / Keystone種 / 浮遊幼生 / 分散と回帰 / 偶発的種間関係 / 多種共存機構 |
Research Abstract |
熊本県天草の富岡湾内にある砂質干潟には、甲殻十脚目異尾下目のニホンスナモグリが高密度で生息している。従来の研究結果から、本種は干潟底生動物群集における非肉食性のKeystone種として位置づけられている。本研究では、(1)本種の浮遊幼生期(ゾエア1〜6期とデカポディッド期)における生残が成体の群集構造の骨組みを作っており、また(2)浮遊幼生が広く分散するために着底場所ごとに多くの種と偶発的に遭遇し、しかも強く影響し合うという仮説を検証することを目的とした。そのためにまず、幼生の分散と干潟への回帰の実態を明らかにするため、1992年6月から11月まで原則として毎週、湾内外において、海底から水面までプランクトンネットによる垂直曳き採集を行った。成体による幼生の放出は、夜間の満潮時から下げ潮とともに一斉に行われた。調査全期間を通じて、湾内のうち干潟から1Km離れた範囲では第1期ゾエアのみが採集された。齢期が進んだゾエアは、湾内では干潟から2〜4Kmの範囲で、また湾外でも高密度で採集された。さらに、これらの幼生は、潮の干満に伴って向岸ー離岸移動を繰り返していることが示唆された。幼生の深度分布は、水深13mから30mの範囲にあった。このことは、幼生が深さを選択しているか、あるいは何らかの海水流動特性によってこの水層に保持されている可能性を示している。なお、デカポディッド幼生は調査全期間中1個体も採集されなかったが、干潟では親規加入個体(幼稚体)が採集された。この二つをつなぐ過程は、今のところ不明である。また、上記と併行して、ニホンスナモグリを含む干潟群集構成種の成体の定期採集も順調に消化しつつあり。1993年6月に完了する予定である。今後は、浮遊幼生個体群の空間的広がりと回帰の機構をさらに群しく明らかにし、またこれまでに蓄積された成体試料の解析を進めることにより、当初の目的を完遂することを目指している。
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