1992 Fiscal Year Annual Research Report
F_1F_0-ATPaseの分子構築とその制御機構の研究
Project/Area Number |
04266204
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 弘 千葉大学, 薬学部, 助教授 (00090473)
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Keywords | F_1F_0-ATPase / 細菌 / 分子構築 / 発現制御機構 |
Research Abstract |
F_1F_0-ATPaseは広く生物界に分布しており、多くの生物では、ATP合成酵素として機能している。しかし、酸化的リン酸化能のないenterococciのF_1F_0-ATPaseは、ATPの合成とは逆の反応を行い、細胞外にH^+を排出することにより、細胞内pHの調節をしている。そのため、本酵素の遺伝子の発現は、細胞内pHにより調節されている。そこで、この調節機構を遺伝子レベルで明らかにするために以下の研究を行った。まず、本酵素の遺伝子の全塩基配列を明らかにした。EnterococciのF_1F_0-ATPase operonの構造は他の生物と同じであったが、プロモーター部位の構造が異なっていた。この特異な構造を持つプロモーター部位が、pHによる発現調節に関与していることが予想された。そこで、このプロモーター部位をCAT(chloram-phenocol acetyltrasferase)遺伝子の上流に挿入し、CAT活性を指標にして、F_1F_0-ATPase遺伝子の転写活性を調べところ、このプロモーター部位は強い転写活性を持つことがわかったが、細胞内pHによる調節能はなかった。したがって、発現調節に関与する部位が別の位置に存在している可能性があり、今後はその部位の同定が必要である。次に、ATP合成を行っているbacilliのF_1F_0-ATPaseのサブユニットを持つhybrid酵素を作成した。bacilliのF_1F_0-ATPaseの性質はenterococciの酵素と異なるにも関わらず、hybrid酵素はenterococciの細胞内pHの調節を行うことがわかった。従って、酵素の性質に関係なく、酵素量が細胞内pHにより調節されれば、細胞内pHを調節することができる事がわかった。
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