1992 Fiscal Year Annual Research Report
古文書料紙原本にみる材質の地域的特質・時代的変遷に関する基礎的研究
Project/Area Number |
04301039
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
富田 正弘 富山大学, 人文学部, 教授 (50227625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯山 賢一 文化庁, 文化財保護部, 主化文化財調査官
綾村 宏 奈良国立文化財研究所, 歴史研究室, 室長 (20000507)
増田 勝彦 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 第二修復技術研究室長 (40099924)
永村 真 日本女子大学, 文学部, 教授 (40107470)
黒川 高明 東京大学, 史料編纂所・古代史料部, 助教授 (90013276)
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Keywords | 古文書料紙 / 和紙 / 楮紙 / 檀紙 / 奉書紙 / 杉原紙 |
Research Abstract |
3年計画の第1年目で、目下、古文書原本料紙のデータを採取し、紙関係文献史料の調査を行っている最中であり、まだ十分な分析までに至っていないので、今のところこれといった成果を得たとはいえないが、これらのデータのコンピュータ入力および化学分析が進み、総合的判断が下せる環境が整ってくれば、徐々にその成果が顕れてくると思われる。現在までの成果と思われるものを述べるなら、次の2点が挙げられる。 1.1つは、紙の厚さの計測法についてである。今回の調査では、古文書の天地や端奥合計20カ所のポイントについて計測しているが、その結果、紙の厚さは、たとえ上質の紙であってもその厚薄の格差は2〜3倍の差が認められた。したがって、紙の厚さの計測に当っては、従来の研究のような数カ所のみの計測では正確な平均値を得るに不十分であり、より多くの計測ポイントを設定するか、あるいは単位面積当りの重量をも併せて考慮しなければならないことがわかってきた。 2.2つ目は、中世の檀紙の製法がわかってきたことである。公験としての下文・御教書等に多く用いられる中世の檀紙は、表面にザラザラした皺が残る紙であるが、従来この皺がどのようにしてつけられたのか、十分説明されていなかった。ところが、今回上杉文書の中の檀紙を数多く調査したところ、1枚の檀紙の4角のうち、2角ないし4角全部から中央部に向って斜めの強い引張り皺が例外なく認められ、また一方刷目はままあるものの板目が全く認められなかった。これらのことを総合的に判断するに、製造工程の乾燥過程は、一般の紙のように板張りして干すのではなく、何か紐のようなもので吊り、また斜目下から引張って乾燥し、板干しによる皺の消滅を避ける方法を採用していたものと思われる。今後、さらにデータを増して、詳細に検討していきたい。
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