Research Abstract |
前年度に引き続き,各研究分担者が全国を北海道,東北,関東,北陸,中部,近畿,中国,四国,九州の9ブロック別に分担して,各地域の橋梁台帳の調査と既存橋梁の実地調査を行った。対象は明治以降,太平洋戦前までに建設された橋梁である。 実地調査を行った現存橋梁については,前年度に作成したフォーマットに従って写真情報,諸元,現状,技術的・意匠的評価などを記録した。収録データが多く得られた地域については,さまざまな側面からの分析を行っている。戦後半世紀を経て,この間の交通網の整理に伴い,撤去,架け直された橋梁もかなりあるが,予期した以上の数についてその記録を収集することができた。とくにトラス橋,アーチ橋については貴重な資料を得ることができたものが多いが,吊橋はその多くが架け換えられ,あるいは寿命を全うして撤去され,極めて少数しか捕捉できなかったのは遺憾であった。全般的にみれば,当然のことながら大都市周辺では現存する戦前橋梁は極めて少ない。評価の高いものとして残された橋の数は形式別には鋼トラス,コンクリートアーチ,鋼桁,鋼アーチ,鉄筋コンクリート桁の順である。桁橋でゲルバー形式が多いのは,当時基礎工法に自信がなかったことを物語っており,コンクリートアーチではローゼ形式,鋼アーチでもタイドアーチ形式が多いのは興味ある事実であった。近年,歴史的構造物の保存が土木工学分野でも重視されているが、この度の調査研究を契機に,そのような課題にも今後資することができれば幸いである。 本研究の成果は各地域ごとに報告書としてまとめられたので,これらを集成した冊子として残し,その概要は機会をみて公刊することを予定している。
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