Research Abstract |
本年は,一部地域では水不足に悩まされたものの,全般的に好天に恵まれ,水稲の生育は全国的に早まり,出穂も7-10日早くなった.病虫害の発生も比較的少なく,農薬の散布回数も少ない条件下で試験が行われた.7月末,山形大学で現地調査をかねて研究会を開き,最終年次のまとめを念頭に,調査項目の確認を行った.2月には東京大学で研究結果の検討会を開いた.各大学における調査結果とともに,各地域における低農薬栽培実践例についても検討した.92-94の試験結果は,93年に冷害の被害が大きかった地域を除けば3年間ほぼ同様であった.栽植密度と施肥量からみた収量反応は下記の通りである. 1)栽植密度は,慣行の半分の密度でも収量に影響がみられない場合と,栽植密度が低下するにつれて収量が低下する場合とがみられた.弘前,岩手,宮城,筑波,滋賀,京都,鳥取,佐賀,宮崎大学は前者に属し,北海道,東北,山形,茨城,静岡,名古屋,島根,九州,鹿児島大学は後者に属した.寒地・暖地による差は認められず.試験圃場の特性に負うところが大きいことが推察された. 2)施肥量と収量との関係は各大学とも明瞭に認められ,慣行施肥量から減肥すると収量減となった.低栽植密度,低肥料では病虫害の発生が少ないが,施肥量の増加に伴い病虫害の被害が大きくなった.従って,施肥量の節減は病虫害の軽減を通じて農薬の低減に有効であるが,収量上の問題があり,栽植密度とあわせて更に検討の必要がある. 3)これらの点を総合して,有機物施肥等により地力を高く維持することができ,稲作期間の登熟温度が十分に得られる場所では,分げつの生産力を利用できるので,栽植密度を低くしても収量をレベルを維持することが可能であると推察された. 4)実践例の調査からは,若干の収量の低下よりも,低農薬や有機栽培による食品としての安全性を重視する考え方が読みとれた.
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