1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04401009
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Research Institution | The National Institute for Educational Research |
Principal Investigator |
牧 昌見 国立教育研究所, 教育経営研究部, 部長 (70000057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 栄治 国立教育研究所, 教育経営研究部, 研究員 (10211872)
佐藤 全 国立教育研究所, 教育経営研究部, 室長 (50004114)
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Keywords | 高校教育改革 / 浸透可能性 / 新しいタイプの高校 / 総合選択制高校 / 単位制高校 |
Research Abstract |
本研究の目的は、多様な高校教育改革の実態を把握し、その構造的基盤を探ることによって、改革モデルとしての〈浸透可能性〉について理論的・実証的な検討を加えることにある。とくに、総合選択制高校や単位制高校などいわゆる「新しいタイプの高校」の成果と課題についていくつかの事実が浮き彫りになった。主な知見は、以下の通りである。 1.高校教育改革実践はさまざまな形で行なわれているが、その大半は「大学進学者向けコースの設定」である。 教員定数などの面で何らかの支援措置がなければ選択科目を増やすことはできず、「効率」が優先される。 2.普通科総合選択制高校の成果は学校の社会・歴史的な背景によって異なるが、推薦入学など選択方法上の特例措置によって概して高い人気を誇っている。たとえば、最大規模の総合選択制高校である埼玉県立伊奈学園総合高等学校の生徒は、中学時に同等の学力水準にあった別の高校の生徒よりも学校生活に対してはるかに積極的である。しかしながら、その効果のかなりの部分は推薦入学などの制度によってもたらされたものである(高校3年生対象の質問紙調査より)。ここに、高校教育改革のパラドックスがある。 3.1988年より制度化された単位制高校もまたきわめて多様な歴史的背景をもっている。これらの高校はいずれも、ドロップアウトした生徒を〈救済〉するという点で有効に機能しているが、これは教師一人あたり生徒数の少なさときめ細かな個別指導によって可能になったものである。 4.生徒数の減少にともなって高校・大学間の接続関係は大きく変化し、消費社会における若者文化もまた大きく変容すると予想される。こうしたマクロな動向を把握しながら高校教育改革の行方を見定める必要がある。
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