1994 Fiscal Year Annual Research Report
筋収縮系におけるメカノケミカルカップリングの画像化と顕微解析
Project/Area Number |
04402053
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石渡 信一 早稲田大学, 理工学部・物理学部, 教授 (10130866)
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Keywords | 筋収縮 / メカノケミカルカップリング / 筋原線維 / in vitro 滑り運動系 / 顕微画像解析 / レーザー光ピンセット / アクチンフィラメント / 分子モーター |
Research Abstract |
本研究の目標は、筋収縮滑り運動系(単一筋原線維、あるいは単一アクチンフィラメントのin vitro滑り運動系)における構造・力学特性の変化と化学反応とを光学顕微鏡下で位相差像あるいは蛍光像として同時画像化することによって、筋収縮滑り運動における力学・化学共役(メカノケミカルカップリング)を分子レベルで明らかにすることである。そこで我々は、昨年度に完成し稼動している顕微画像解析装置(2波長蛍光励起装置、倒立顕微鏡、顕微操作装置(昨年度より改良)、蛍光用特殊フィルター・ミラー(改良)、Double-View(W)光学系、超高感度テレビカメラ、ビデオ、画像処理装置)や、レーザー光ピンセット法(赤外YLFレーザー(1W)、倒立顕微鏡(赤外光導入用に改造)、W光学系、超高感度テレビカメラ、ビデオ、画像処理装置(一部は上と共用))をさらに改良した。(1)アクチン分子に特異的に結合し、しかもpH感受性の蛍光物質 SNAFL-Phalloidin(SF-Ph)を用いた実験については既に予備的結果を昨年度報告したが、この色素は2波長励起・1波長検出に適しており、W光学系による同時画像化には適していない。そこで1波長励起・2波長検出の可能な SNARF-Phalloidin(SR-Ph)を特注した。本年度は、この色素がアクチンフィラメントに結合したときや、ミオシン分子と相互作用した際のpH感受性の蛍光特性を検討した。この色素を用いた、収縮、滑り運動に伴うアクチン分子近傍のpH変化の画像化については、現在検討中である。(2)in vitro滑り運動系において、ATP存在下でアクチンフィラメントに発生する滑り力とステップサイズとを顕微計測した。滑り力は光ピンセットの捕捉力が大きいほど大きく、我々の装置の最大捕捉力の下で約3pNであった。一方ステップサイズは約10nmであった。一方、ATP非存在(硬直条件)下でのアクチンフィラメントと一個のミオシン分子(実際に用いたのはHMM分子)との間の結合力(実際に計測したのは破断力)を計測し、平均9.2pNという値を得た。同時に得られた張力-歪み曲線の最大傾斜からHMM分子の弾性率を求めたところ、約0.5pN/nmであった。ただし、この値にはHMM分子以外の弾性体からの寄与が含まれている可能性があり、今後の検討課題として残されている。
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