1994 Fiscal Year Annual Research Report
rbcLの塩基配列比較にもとづくシダ植物(広義)の系統解析
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04404003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩槻 邦男 東京大学, 理学部, 教授 (10025348)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 哲明 東京大学, 理学部, 助手 (60192770)
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Keywords | シダ植物 / rbcL / 塩基配列 / 分子系統樹 / チャセンシダ科 / ホウビシダ類 / 分類学 / 進化 |
Research Abstract |
本年度は,チャセンシダ科のオオタニワタリ類およびヤクシマホウビシダ類について,世界中の様々な場所で採集してきた多数の個体を分子系統学的に解析した.ヤクシマホウビシダ類については,中国雲南省の3カ所(大理,無量山,河口),タイ(ドイ・インタノン山),ベトナム(シャパ)および日本(屋久島)から採集した合計23個体についてそのrbcLを決定・比較した.日本のヤクシマホウビシダは,渓流沿いの常に水しぶきがかかる半水生の場所に生える種類で,その生育環境に適応して葉が細胞層2層にまで薄くなり,葉中の細胞間隙も消失した特殊な種である.同様のものはヒマラヤから中国,インドシナをへて台湾,日本にまで広く分布している.一方,中国からインドシナにかけての地域には,水とは直接関係のない環境に生え,葉が細胞層3-4層あり,細胞間隙も発達するものも共存している.これらは,葉の薄さ以外では形態学的にはっきり区別することの難しい種複合体を形成している.解析の結果,葉の薄い典型的なヤクシマホウビシダ型は,産地を問わずrbcLの塩基配列がほとんど同一で,同じ種と考えても問題がないことがわかった.一方,葉質の厚いものは薄いものと異なるだけでなく,その中に少なくともrbcLの塩基が5つ異なる2型(おそらく2種)があることもわかった.同様の解析をオオタニワタリ類についても行った.シマオオタニワタリ(Asplenium nidus)とリュウキュウトリノスシダ(A.australasicum)は共に熱帯アジアに広く分布することになっているが,一つの種がこのような広い分布をもつことは考えにくい.それを裏付けるようにrbcL解析の結果はラオス産と奄美大島産のシマオオタニワタリは塩基配列が3%も異なった.さらにリュウキュウトリノスシダでは東南アジア産と日本産のもの(沖縄,小笠原の2個体)は単系統にならず,この種が自然群でないことを示している.
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