1993 Fiscal Year Annual Research Report
リヴァースジェネティックスによるハンチントン病の異常遺伝子産物の同定
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04404041
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金澤 一郎 東京大学, 医学部(医), 教授 (30110498)
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Keywords | ハンチントン病 / DNAマーカー / 第4染色体 / CAGリピート |
Research Abstract |
ハンチントン病は、中年以降に出現する舞踏運動、知能障害を臨床的特徴とする常染色体性優性遺伝する遺伝性神経変性疾患である。長年にわたり、本症の異常遺伝子座を求める研究が続けられてきたが、1983年に米国グゼラ博士らはDNAマーカーとの遺伝子連鎖の研究から、この異常遺伝子が第4染色体短腕先端部に局在することを発見した。そこで我々はグゼラ博士との共同研究によって、著しく頻度が少ない我が国のハンチントン病が、はたして遺伝子的に欧米のそれと同一である否かを検討した。その結果、我が国のハンチントン病も欧米と同じ遺伝子によると考えられることを見出した。同時に、我々は本症の遺伝子座が4p16.3領域のうちのやや中心体寄りに位置することを見出した。丁度その頃に、グゼラ博士らは本症の異常遺伝子を特定することに成功し、これをIT15遺伝子と名付けた。これは5'端にCAGリピートを正常でも10-25程度もち、ハンチントン病では、これが40以上に伸長していたのである。なお、このIT15のCAGリピートの直後に7または10個のプロリンストレッチが続いている。そこで我々は、本年度の研究において、現在までに収集した本邦のハンチントン病約60家系のサンプルについて改良PCR法によってIT15遺伝子のCAGリピート数を実測し、発病の有無および連鎖解析の結果との対応、CAGリピート数と発病年令との関係、プロリンストレッチの多型との連鎖不平衡の有無、などについて検討した。その結果、D4S95との連鎖の結果とはほとんどすべて一致し、発病年令とCAGリピート数とは逆相関があり、これらは欧米の結果とほとんど変わりはなかった。しかし、プロリンストレッチの数を調べたところ、欧米では7個であるとされているのに対して、我が国の発病者のほとんどで10個であった。このことは本邦のハンチントン病の起源を考える上で重要な知見である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 金澤一郎: "分子遺伝学的異常による大脳基底核疾患" 脳と神経. 45. 129-132 (1993)
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[Publications] Kanazawa I,Murata M,and Kimura M.: "Roles of dopamine and its receptors in generation of choreic movements." Advances in Neurology. 60. 107-112 (1993)
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[Publications] Watanabe M,Kondo I,Kanazawa I.: "A linkage study with DNA markers(D4S95,D4S115 and D4S111)in Japanese Huntington disease families." Japanese Journal of Human Genetics. 38. 193-201 (1993)
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[Publications] 桜井靖久・金澤一郎: "ハンチントン病と痴呆" 老年精神医学雑誌. 4. 1118-1123 (1993)
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[Publications] Toda T,Segawa M,Kanazawa I.: "Localization of a gene for Fukuyama type congenital muscular dystrophy to chromosome 9g31-33." Nature Genetics. 5. 283-286 (1993)
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[Publications] Nagafuchi S,Kanazawa I: "Dentatorubropallidoluysian atrophy expansion of an unstable CAG trinucleotide on chromosome 12p." Nature Genetics. 6. 14-18 (1994)