1992 Fiscal Year Annual Research Report
肝移植実験における再潅流現象による肝及び胃損傷に関する研究
Project/Area Number |
04404053
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
北島 政樹 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90112672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 憲治 稲城市立病院, 外科, 医長 (10151739)
白杉 望 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90226324)
島津 元秀 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80170934)
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Keywords | 肝阻血・再潅流 / 肝移植 / フリーラジカル / サイトカイン / 微小循環 / Primary Graft Nonfunction / IL-1receptor antagonist |
Research Abstract |
肝移植の前段階としてラット肝阻血・下大静脈クランプモデルを用いて、肝虚血・再潅流による組織障害とフリーラジカル産生および微小循環との関連について検索し、これらに対するサイトカインとくにIL-1の関与について検討した。次にラット肝移植モデルを用いて、Primary graft nonfunction(PGN)と肝微小循環とくに白血球膠着現象との関連を検索し、IL-1 receptor antagonist(IL-1ra)およびPGE1のPGNに対する予防効果を検討した。 1)肝阻血・再潅流:肝阻血(30分)・再潅流後60〜180分では、肝細胞の萎縮・変性を認めた。フリーラジカル(Chemiluminescence)は60分をピークに肝下部に比べ、肝上部下大静脈血で増加を認め、肝から流出した好中球のフリーラジカル産生増加が示唆された。同時に門脈血流量、肝組織血流量の低下および肝組織CuZn-SOD,Mn-SODの減少を認め、またfluorescence videomicroscopyで観察すると、白血球の血管内皮への膠着が見られた。一方、肝阻血中に門脈よりIL-1raを投与すると、上記の組織障害、フリーラジカル産生増加、白血球の膠着が抑制された。すなわち、阻血・再潅流時の組織障害機転として重要なフラーラジカル産生には、白血球膠着などの微小循環障害が関与し、IL-1はそのmediatorであり、IL-1raはその障害防止に有用であると考えられた。 2)肝移植:fluorescence videomicroscopyで測定した肝内白血球血流速度および白血球膠着数とgraft survivalとは相関した。肝保存液にIL-1raを添加すると、白血球血流速度、膠着数は改善し、survival rateも向上した。また肝移植後にPGE1を投与すると血流速度は増加し、微小循環の改善がみられた。すなわち移植肝のviabilityは微小循環と密接な関連を有しており、IL-1raやPGE1は微小循環を改善させ、PGNの予防に有用であることが示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 白杉 望: "肝虚血-再潅流によるフリーラジカルの産生とその制御におけるIL-1の関与について" 日本消化器外科学会雑誌. 26. 358 (1993)
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[Publications] 市東 昌也: "肝虚血-再潅流障害における細胞間接着分子の発現およびTNF産生に対するIL-1raの効果" 日本消化器外科学会雑誌. 26. 429 (1993)
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[Publications] 白杉 望: "肝虚血-再潅流におけるフリーラジカルの産生とIL-1の関与" 日本消化器外科学会雑誌. 90. 408 (1993)
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[Publications] 島津 元秀: "フリーラジカルと各種疾患-臓器移植" 現代医療. 25. (1993)
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[Publications] 北島 政樹: "臓器と微小循環障害" 治療学. 26. 55-59 (1992)
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[Publications] 北島 政樹: "消化器血流の研究(8)肝疾患と胃の相関-肝硬変(門脈圧亢進症)" (1992)
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[Publications] Masaki Kitajima: "Gastrointestinal Function-Regulation and Disturbances-" Amstendam Excerpta Medica., (1992)