1993 Fiscal Year Annual Research Report
唾液腺腫瘍細胞による基底膜蛋白質生合成と分泌過程の解析
Project/Area Number |
04404070
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
朔 敬 新潟大学, 歯学部, 教授 (40145264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 誠 新潟大学, 歯学部・附属病院, 講師 (50107778)
程 〓 新潟大学, 歯学部, 助手 (40207460)
福島 祥紘 新潟大学, 歯学部, 助教授 (00018631)
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Keywords | 基底膜 / ヘパラン硫酸プロテオグリカン / 唾液腺 / 腺様嚢胞癌 / 共焦点レーザ顕微鏡 / 免疫細胞化学 / in-situハイブリダイゼーション / 間質改造 |
Research Abstract |
平成4〜5年度の研究実施計画にもとづいて次の実験をおこない、ヒト唾液腺腺様嚢胞癌由来細胞ACC2およびACC3が、IV型コラゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクチン、ファイブロネクチンの細胞外基質(ECM)の遺伝子の発現から基底膜構築さらにその改造までの全過程を光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡のレベルで解明した。ACC細胞系をモデルにして、腫瘍産生基底膜による増殖制御と腫瘍細胞による間質改造機構の一般的原則がえられた。 (1)細胞培養 (1)接着試験の結果、ACC細胞は基底膜関連分子群に対する親和性がみられた。(2)増殖:基底膜分子存在下での増殖率がたかく、核DNA量解析からも分裂期細胞集団の増加が確認された。(3)唾液腺細胞の各種分化マーカの発現をフローサイトメトリで解析した結果、ACC細胞が導管上皮・筋上皮の両方向への分化をしめすことが判明した。(2)光学顕微鏡による解析:共焦点レーザ顕微鏡を用いて、培養ACC細胞の基底膜関連分子の免疫反応を追跡したところ、上記五種の分子の小胞体における合成、ゴルジ装置への濃縮、細胞外への分泌と沈着の過程を三次元的にとらえることができた。とくに、免疫反応陽性の小胞体、ゴルジ装置の位置から分泌経路が示唆され、細胞E外の沈着の開始部位、さらに、これらの基底膜分子分解酵素のACC細胞による産生をふくめて、その改造現象を確認できた。また、in-situハイブリダイゼーションによって組織内増殖腺様嚢胞癌細胞にこれら基底膜分子のmRNA発現があることを確認した。(3)電子顕微鏡による解析:細胞播種後、周密化までにACC細胞の超微形態変化のあることをみいだした。すなわち、細胞数の増加とともに細胞は扁平化し、細胞基底面下に高電子密度の均質無構造物質の沈着とアクチン線維の濃縮をともなう焦点接触が観察され、細胞間結合装置と細胞間小管腔、分泌顆粒の増加がみられ、基底膜分子産生と細胞増殖の関連が確認された。免疫電顕法では、粗面小胞体、ゴルジ装置、分泌小胞での基底膜分子局在が確認された。(4)生化学的解析:35S硫酸と35Sメチオニン標識と免疫沈降法によって、ACC細胞が基底膜構成分子のひとつヘパラン硫酸プロテオグリカンの生合成分泌していることが確認された。 上記(2)の分解酵素免疫組織化学、(3)の凍結超薄切片法による免疫電顕と(4)生化学的解析に関して、第83回日本病理学会総会(3月29日)で、また第7回国際口腔病理学会(7月19日)で研究成果を報告する予定である。学会発表までの間、データの公表を差し控えたいことと、さらに実験結果の再確認と学会で国内外の一流研究者からの批判をうけて報文とし、学会報告後により充実した内容の研究成果報告書を作成したい。
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