1993 Fiscal Year Annual Research Report
マウスにおける自発活動の遺伝基盤と学習下の変容過程
Project/Area Number |
04451017
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
牧野 順四郎 筑波大学, 心理学系, 教授 (60015443)
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Keywords | 行動の遺伝 / 近交系マウス / 回避学習 |
Research Abstract |
目的:本年度は近交系マウスの自発活動の遺伝分析を実施した。従来は定量的な遺伝分析が常であったが、ここでは行動の直接観察法により、オープンフィールドにおける自発活動が非常に異なる2系統のマウス(C57BL/6とBALB/c)を用い、交雑群(F1およびF2)を作ることにより、系列構造を中心として定性的なオープンフィールド行動の遺伝様式を調べた。 方法:行動項目数を8個用意し、5秒単位で出現した異なる行動項目を列挙するという多重事象時間見本法を用いた。観察時間は10分間。被験体はC57BL/6、BALB/c、F1、F2の計229匹であった。まず、単位観察時間での行動項目の組み合わせ[行動状態]を調べ、その種類を数え上げた。その結果、理論上1023種類あり得るうち、わずか13行動状態で全体の約98%を占めること、すなわち5秒間の窓で見る限り、13種類の動き方しか起こらないことを意味する。このことは、観察データが13個の行動項目を用いた時間見本法の結果と同等であることを意味する。行動(状態)の推移分析は前後半5分ずつに分けて行なわれた。 結果:(1)BALB/cの行動的・系列構造的特徴:置かれた場所からすぐには離れず、前半身を伸ばして前進しようとするが後半身が抵抗するので、前に進みかけるが止めるという行動(ストレッチング)を頻繁に起こす。したがって、BALB/cは「ストレッチングから移動行動」と「ストレッチングから立ち上がり」、およびその逆、という行動系列が優勢であった。(2)C57BL/6の特徴:ストレッチングを殆んど示さず、終始歩き回っては立ち上がるので、「歩行から立ち上がり」、およびその逆、の行動系列がほとんどを占めた。(3)F1の特徴:ストレッチングを頻発させながらも、活発に歩き回り、また立ち上がるという文字どおり両系統が混合した特徴を示した。(4)F2の特徴:分析が不充分であるが、BALB/c型、C57BL/6型およびF1型の個体とが混在するはずである。
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