1993 Fiscal Year Annual Research Report
青年期発達と〈家族-学校-企業のトリアーデ〉に関する社会学的基礎研究
Project/Area Number |
04451032
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 甫 北海道大学, 教育学部, 教授 (90002146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 司 札幌学院大学, 人文学部, 助教授 (40142905)
浅川 和幸 北海道大学, 教育学部, 助手 (30250400)
所 伸一 北海道大学, 教育学部, 助教授 (50133682)
木村 保茂 北海道大学, 教育学部, 教授 (40003959)
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Keywords | 青年期発達 / 市民社会の種差 / 市民社会の地域差 / 自己革新性と共育 / 特殊化された学校社会 / 職業人としての自己形成 / 社会人としての自己形成 / 生涯学習システム |
Research Abstract |
1.「市民社会」の〈家族-学校-企業のトリアーデ〉としての実体的把握。「市民社会」は「共同体社会」のなかから生まれ、共同体としての質を保持し続ける〈家族〉の生活世界と、私的諸個人の“労働=所有"(それを前提とする“資本-賃労働"関係)という半ば自立的な〈職域〉の世界、これら両者に規定されつつ媒介する〈学習〉の世界の“統体"として成立した。この〈近代「市民社会」〉は〈民族的「公共国家」〉と一対の存在である。〈現代「市民社会」〉は、その基底に諸〈家族〉間の実体的生活連関(相互依存と相互承認の体系)を持ちつつ、さらに〈職域〉と〈学習〉との両世界が諸個人の“自己行為"を前提としつつも、なおかつ、それらを、つまり〈家族-自己学習-自己労働〉と〈資本-労働力養成-労働力再生産〉との両側面を、国家が“知的=道徳的ヘゲモニー"によって“総括"している社会、である。当然、両側面の“バランス"(公共性)が問題となり、そこに「市民社会」の“種差"が生まれ、また“地域差"が立ち現れる。 2.〈札幌市-小樽市-後志郡部〉での子ども・青年の発達過程の実態調査。〈東京都-大分県-沖縄県〉という地域差との対比を念頭に、本年度は小樽市での調査に重点を置いた。〈家族-自己学習〉と〈労働力養成-労働力再生産〉が重なる「家族-学校」においては、I中学校の母子と教師との関係(生活構造と価値志向)、B工高の卒業生で専門学校への進学者(進路の再選択過程)、子どもの生活の場としての地域環境に対する階層性と共通性、の把握を行った。また、昨年の札幌A中学の母親との対比において、同じく札幌の生活クラブ生協組合員の生活構造と価値志向を調査した。〈東京都-大分県-沖縄県〉での調査は行えなかったが、“東京都札幌区"的な〈札幌市中央区〉と“自立的中小企業"地域の〈小樽市手宮地区〉の価値志向を比べると、前者では〈労働力養成-労働力再生産(-競争指向性)〉に傾く傾向があり、後者の〈家族-自己学習(-自己労働)〉が一定の比率を占める傾向とは対照的である。来年度の〈後志郡部〉では一層の差異が見られよう。
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