1993 Fiscal Year Annual Research Report
原爆がもたらした〈地獄〉と〈惨苦〉に関する実証的研究
Project/Area Number |
04451035
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
濱谷 正晴 一橋大学, 社会学部, 教授 (60017639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 由紀 一橋大学, 社会学部, 助手 (80168020)
石田 忠 一橋大学, 社会学部, 名誉教授 (40017603)
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Keywords | 原爆被害の全体像 / 極限状況(地獄) / 精神的外傷 / 死の恐怖 / 不安 / 生きる意欲の喪失 / 原爆体験の思想化 / 人間 |
Research Abstract |
本研究の目的は、原爆がもたらした〈地獄〉と〈惨苦〉の様相を、『原爆被害者調査』(13,168票、1985年実施)のデータにもとづいて実証的に再構成することにある。 この2年間の中軸的作業は、〈死者の苦脳(惨苦)〉と〈生者の苦脳(惨苦)〉との関連を探るうえで重要な〈原爆被害〉の諸要因と〈原爆体験の思想化〉の型を確定すること(実施計画1と5)であり、前年度における仮説的な類型化の試み(1000事例分析)をふまえ、今年度は、その検証に不可欠な設問の全てに有効な回答のある約7000事例を選定して綿密な集計分析作業を行った。その結果、(1)〈こころの傷〉、〈死の恐怖〉、〈病気がち〉、〈不安〉、〈子・孫への不安〉のいずれかの苦脳を抱いている被爆者を被害層別に分析すると、被害の数が多くなるほど〈生きる意欲の喪失〉体験をもつ人の割合が規制的に増えていくこと-〈生きる意欲の喪失〉は原爆体験の重さ・深さと相関していること、(2)〈生きる支え〉を6つの型に類型化し、被害層との関連を探ってみると、原爆体験の重く深い層になればなるほど、生きる目的を探求しないではおられず、それが反原爆(原爆否定)の方向に向かっていることが明らかになった。これにより、本研究における基本仮説が検証され、分析上の粋組が固まった。 また、前年度にひきつづき、個票データの確定と保存に努めるとともに、〈地獄〉の体験や〈原爆死〉の様相など、自由記述回答のデータ・ベース化にとりくんだ(実施計画2、3、4)。 以上の作業を進めるため、研究打合せ旅費や会合費を節約して可能な限り謝金に充当した。 今後、質的データを資料化し、量的データと統合する分析方法の深化が求められている。
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