1994 Fiscal Year Annual Research Report
海外長期滞在経験者の異文化適応に関する社会心理学的調査
Project/Area Number |
04451039
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Research Institution | UNIVERSITY OF SHIZUOKA |
Principal Investigator |
西田 ひろ子 静岡県立大学, 国際関係学部, 助教授 (00218166)
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Keywords | 異文化間コミュニケーション / 異文化適応 / スキーマ理論 |
Research Abstract |
平成5年度及び6年度の前半において、日本企業で働く在日外国人179名から質問紙が回収できた。また、外国人と共に働いている日本人上司及び同僚50名に対して質問紙調査を、また20名にはインタビュー調査を実施することができた。回収済み質問紙の分析から、以下の点が確認できた:(1)これまでの異文化適応研究で、異文化に適応する際に影響を与えると報告されている社会的要因や生得的要因は、日本企業で働く外国人の企業への適応には関係なかった。これに対し、責任ある、また満足できる仕事が与えられ、日本人上司や同僚とうまくやっていくという環境的要因が大きく関係することが判明した。 また、本調査の理論的枠組としてスキーマ理論を用いた。さらに、スキーマ理論に基づいた文化スキーマ分析法(cultural schema analysis)を用いて分析した。異文化間コミュニケーション調査をスキーマ理論の観点から分析することは、これまでされてこなかったため、「異文化間コミュニケーション研究における文化スキーマ分析(A cognitive approach to intercultural communication based on schema theory)」についての論文(2点)を執筆し、現在アメリカの学会誌に投稿中である。文化背景の異なる人々の間のコミュニケーション上の問題を異なった認知システムの違いととらえ、さまざまな状況における人間行動ルールを明確にしていくことは非常に意義あることと思われる。この観点からの研究は特M.ArgyleやA.Furnhamといった英国の社会心理学者たちによっておこなわれてきた。Argyleたちの調査・研究の手法を日本における異文化間コミュニケーション研究に応用しながら、日本社会における異文化間接触のさまざまな問題を解明する方法を確立していく必要がある。本調査は、こういった意味で大変重要な第一歩だといえる。
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