1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04451072
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
岸田 裕之 広島大学, 文学部, 教授 (10093585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 伸隆 広島女子大学, 文学部, 助教授 (60142337)
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Keywords | 戦国大名毛利氏 / 長州藩編纂事業 / 都野家文書 / 三隅家文書 / 譜代下人 / 人返協約 / 中国地域 / 大名領国 |
Research Abstract |
本研究は、中国地方を制覇した戦国大名毛利氏、同一族、同家臣の家系に伝来する原文書の蒐集調査を推進し、江戸時代における長州藩編纂事業の際にその基準からはずれて捨象されていた文書を発見し、あわせて原文書によって編纂物(写本)の誤読を正したり、花押の形状、封の様式、墨色等を確認すること、またそれらを翻刻・紹介するための基礎的研究を推進すること、そしてそれらを通して当時の歴史的世界をより多様により豊かに再構成した成果を発表していくことを目的にしている。 今年度はとくに山口県文書館、毛利博物館、防府市満願寺、厳島神社、大阪城天守閣博物館、福岡市博物館鳥取県立博物館等において未刊・未見の関係史(資)料の蒐集調査を進め、多くの新出文書の発見を含め、貴重な成果をあげた。 そして今年度は本研究の最終年度の成果としてふさわしい次のものを研究論文として発表しえた。 山口県阿武郡阿東町の波多野家所蔵の「都野家文書」、現在は広島県佐伯郡大野町王舎城美術宝物館所蔵の「三隅家文書」中の新出文書を翻刻・紹介し、それによって豊臣秀吉政権下に至る毛利氏領国の領主家の譜代下人の実態、その逃亡に対応した領主間の人返協約とその実態等を解明し、このような当該時代の社会構成を描くのに欠かせない文書が江戸時代の長州藩の編纂事業で閥閲録等に収録されなかったのは、その性格が近世の主従の観会に基づく「判物」中心の編纂であったためであることを指摘し、近世と異なる中世の社会・文化構造をより多様より豊かに描くためには、ここ十数年間にわたって私が進めてきている中国地域の大名領国関係史料の蒐集調査と研究が一層推進されることが重要であると述べている。
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