1993 Fiscal Year Annual Research Report
中世ヨーロッパにおける国家と教会-東欧・西欧の比較史的研究
Project/Area Number |
04451077
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
栗生澤 猛夫 北海道大学, 文学部, 助教授 (40111190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 節夫 青山学院大学, 文学部, 教授 (70036060)
東出 功 北海道大学, 文学部, 教授 (30041875)
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Keywords | 中世ヨーロッパ / 国家と教会 / 東欧と西欧 / 中世ポーランド / カトリック教会と正教会 |
Research Abstract |
第二年度における研究も基本的には代表者・分担者それぞれが自己の課題に取り組むという方法で行なわれ、その成果は随時相互に報告しあったのみならず、年度末には(平成6年1月)代表者・分担者以外の研究者(高知大学・有光秀行氏-イギリス中世史、東北大学・高橋基泰氏-イギリス近世史)が来札されたのを機会に、さらに数名の研究者を交えて(札幌学院大学・菅原秀二氏-イギリス近世史、北海道大学・山本文彦氏-ドイツ中世史、同三佐川亮宏氏-ドイツ中世史)研究会を開催した。代表者はさらに富山大学・吉田俊則氏(ロシア中世史)、静岡県立大学・豊川浩一氏(ロシア近世史)とも連絡をとり、意見を交換した。 代表者は中世ポーランド教会の成立に関する報告を作成する準備を進め、それを完成させた。そこから得られた結論をヨーロッパ=キリスト教世界全体の枠組みの中で言い換えるならば、第一に、ポーランドのキリスト教化は、その時期(10世紀末)とその形態(君侯の改宗が国民のそれに先行したこと)において、ヨーロッパの北部及び東部辺境諸民族の一つの典型的な例として捉えうること、第二に、ポーランドは最初からカトリック圏に属すこととなった--他の可能性がほとんどなかったという意味ではそれは自然であったと言える--が、そのことはポーランド中世国家の形態(王国行政機関における聖職者の重要な役割)及びポーランド・キリスト教信仰のあり方(二重信仰の急速な解消)等に強い影響を及ぼしたこと、第三に、それにもかかわらず、ポーランドにおいて見られた特殊性は、ポーランド教会のロシア等正教諸国の教会との比較を要請するものであること、等である。研究代表者が上述の如き結論に到達しえたのは、中世イングランドの教皇官僚に関する分担者(東出)の研究に強い示唆を受けたことによるところ大であった。
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[Publications] 栗生沢 猛夫: "東欧世界の成立(I),(II)" 北海道大学放送教育委員会編『文明の十字路-東欧』. 7-35 (1992)
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[Publications] 栗生沢 猛夫: "モスクワ国家における貴族の退去権ないし勤務の自由について" 和田春樹他編『スラブの世界-歴史』(仮題・弘文堂). (予定). (1994)
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[Publications] 東出 功: "Calendar of Papal Registersにおける教皇官僚-1198年から1471年まで.(上)(中)(下)(追補)" 北海道大学『文学部紀要』. 74〜78. 1-63, 1-48, 1-59, 1-74 (1992, 1993)
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[Publications] 東出 功: "聖職者における教皇・国王への同時両属-1198年から1303年まで" 北海道大学『文学部紀要』. 79. 1-79 (1994)
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[Publications] 東出 功: "国王直属のクレーリクスとカペラーヌス-1216年から1272年まで" 北海道大学『文学部紀要』. 80. 1-86 (1994)
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[Publications] 渡辺 節夫: "領主と農民" 鈴木・江川編『西欧中世史』(ミネルヴァ書房). (予定). (1994)
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[Publications] 倉持・田中・和田 編: "世界歴史大系・ロシア史I(中世)(栗生沢猛夫執筆 第4-6章)" 山川出版社(予定), (1994)